標準化が図れる部品業モデルへ…


 これからの時代、キー部品(鍵を握る機能の発揮部分)は汎用化しソフトで細かい仕様を決めるようになる。そうなると、一般には部品事業を下流事業と切り離し外販業態の方が時代の波に乗りやすい。  ネットワーク時代になると、様々な応用を目指して、異業種が参加してくるので、社内の下流部分の事業と組むのでは大きなチャンスを失いかねない。世界の標準部品を作り上げ、様々なアプリケーションの動きに参加し、分野毎に他社と協力して仕様を決めるリーダーシップを発揮できるような体制を敷くことが望ましい。

 この結果、皆から望まれて独占的地位を保持することができるかも知れない。しかし、より高度な研究開発に進むことで地位強化を図ることを第一義に考える方が自然だ。その場合は、製造委託やライセンシング・アウトを戦略的に進め、セカンド・ソース企業を設定したらよい。なんといっても重要なのは、あくまでも自社の考え方で標準仕様を確定することである。従って、部品開発に係わる個別要素技術の重要性はこの観点から判定するべきだ。

 これが下図の中段に示されるモデルだ。
 キー部品が標準化されれば圧倒的な収益性を確保できるし、普遍的なものと認識されれば、その部品を利用したアプリケーションが増え市場が拡大していく。例えば、パソコンのキー部品であるCPUは独立部品業が供給している。このメーカーのリーダーシップの下に仕様標準が作成されるからこそ、下流の事業者も安心して事業ができる。実際、最終製品業、パソコンメーカー、デルは部品業を持たないにもかかわらず、大成功を収めている。グラフィック・ボードというモジュールで成功する企業もある。専門部品業は技術を磨いて、このコミュニティで動くノウハウを得れば、下流企業が研究開発や革新的事業により市場をこじ開けてくれるから、成功の可能性が高まるのである。

 従って、上段のモデルで、独自のコミュニティを作ることに挑戦しないのなら、企業グループ内の最終製品業から完全に独立すべきだろう。たとえ、製品事業が競争力あり、その競争力の根源が部品技術であっても、早めに決断すべきだ。ネットワーク時代になれば両者共に力を失う可能性があるからだ。
 部品事業を独立させたら、最終顧客へどのようなベネフィットを提供するかという仕様を打ち出せるような研究開発体制を作る必要がある。まずは、社内の最終製品事業者まかせではなく、独自のインテリジェンス活動が必要になる。この巧拙で戦略の切れ味が決まるといっても過言ではない。
 こうした戦略がうまく機能しないと、部品業にとって一番危険な下段のモデルに落ち入る。ハードを製造しない企業が、どのように商品を使うかを先に設定し、それに合わせ「モノ」を作らせるというものだ。ネットワーク・コミュニティを先に作り上げられてしまうと、このようなこともありうる。

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