金属素材産業は情報通信技術で飛躍が可能(2)…


 インターネットは、生産現場にも影響をあたえる。現時点では、従来のプログラム言語による専用プロセス・コンピュータによる現場での自動生産システム運営というのが一般的だが、これからは、この体制が大きく変貌する可能性が高い。(1999 AISE Annual Convention; "Intranet in Steel")

 これからは、オートメーション・ソフト自体は標準化され、運営のアウトソーシング化が進むと予想される。製造プロセスの技術情報で先行すれば、業界リーダーとして技術情報提供業も可能となろう。

 99年5月にNCMSの第13回年次大会で鉄鋼材の特性表示についての共同研究が提起されているが、これは、絶好の標準化の動きだ。鉄材、成形、熱処理、ユーザーすべてが、素材特性表記についての標準に合意すれば、要求特性に合わせた製造プロセスの最適化研究が一挙に情報処理技術の土俵の上に乗ってくる。
 この情報と生産プロセス上のパラメーターや成分データと結合していく際に、先進的な生産技術を投入していくことが肝要だ。というのは、インターネット技術で生産プロセスを管理していくと、大転換が起きるからだ。生産ラインの多数のセンサーが無線で工場内のイントラネットに接続されると管理プロセス形態の変革がおきる。データが常時送られチェックする固定的な仕組みから、多数の測定点から必要時にデータを集めて回るという柔軟な仕組みに変えることができるからだ。

 このような将来の工場像を考えると、標準化されたセンサー入力端末の開発とその利用方法で先鞭をつけることが重要となろう。こうした技術は金属素材メーカーにはない。といって、センサー企業は、生産現場のデータをどう収集すれば、素材特性管理に繋がるかの知識は無い。どうしても両社が組みながら、先駆けていく必要がある。

 成功裏に工場の新しい生産管理システムが完成したとすれば、それは今までのような自社固有のソフトで留まらないものになる。遠隔工場管理や、全自動工場化ソフトの標準になるからである。次世代のネットワークに適合するものをつくれれば、その成果は、遠隔操作ファクトリー・遠隔メンテナンスにまで進めることも可能だ。

 「産業革命」に向かって情報通信技術を梃子にして、将来に向けた研究開発に一歩踏み込むか、が今問われている。ハイパフォーマンス・コンピューティングの波に乗る体制に変える必要があろう。この波に乗らない限り、進歩のスピードアップは難しい。
 もちろん、先端情報処理技術の登用には、大きな投資とリスクを背負い込むことになるが、それだけの見返りはある筈だ。このような飛躍のチャンスは、今を逃すと、2度とはあるまい。伸ばすべき技術領域を明確化し、この分野に係わる研究者・技術者の徹底的育成を進めると同時に、情報通信技術の最先端を走る企業の力を活用できる体制構築を急ぐ必要があるのだ。
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