知恵で戦うファインケミカル事業(3)…


 様々なタイプの業態があるのだが、「知恵」の時代に合った挑戦のしかたを考えるべきだ。知的所有権をどう活用するかが、マネジメントの問題として極めて重要である。

 熾烈な、知的所有権の戦いが始まりつつある。にもかかわらず、未だに、特許を中心とする自社の知的財産の内容やその意味、競合企業の状況について、ほとんど知識が無いままマネジメントを行っている企業がみられる。特許を防衛目的で考えているから、特許専門家や法規部門に管轄させればよいと考えているようだ。このような状況では、チャンスを逃がすだけでなく、ポジションを失いかねない。自社のコア・ケーパビリティと関連付けて、長期レンジの研究開発方針策定に知的財産の利用方法を策定しないと、技術で飛躍することは難しいのである。

 これからは、研究開発は世界の様々な地域で行う必要に迫られる。自社の知的財産に関しても、散らばる拠点に情報伝達を的確に進める必要がある。
 企業買収や合併が行われれば、知的財産の取捨選択・再整理が不可欠だ。
 将来的に意味ある特許かを明瞭にし、ライセンス・アウトやスピン・オフの判断を的確に行うことが重要なのである。
 特に、自社に適合しそうにない特許はすべからくライセンス・アウトしていく体制構築は不可欠だ。

 ライセンス・アウトがはかどらないのは、的確なロイヤリティ・レートを決める仕組みが欠落しているからだとも言える。知的財産の市場価値を判定する方法論は色々と提案されてきたが、(例えば、G.V.Smith & R.L.Parr: "Valuation of Intellectual Property and Intangible Assets", John Wiley & Sons, Inc., 1989)現実のレート決定はそう簡単ではない。
 モデルを構築して迅速な対応を図っていかない限り、数多く生み出される特許を様々な企業にライセンスしていく業務の遂行は無理であろう。例えば、図のように、分野と、その所有権の戦略的インパクトによって決定される「プレミアム倍率」を決め、市場に合わせて設定するなどの仕組みを作るべきだ。
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