アカデミズムとの連動体制…


 技術のタネを“生み出す”仕組みを作りあげることは、長期的な競争力を保持する上では必須条件といえよう。数多くの研究者を擁するアカデミズムの力を企業の研究開発に取り込む方策が真先に考えられる。

 2000年に策定される、第2期科学技術基本計画では、産業技術政策と目的・目標を共有することが特徴となりそうだ。文字通り受け取れば、科学技術や研究開発活動だけの範囲で考えて来た従来の政策の大転換になるかもしれない。(99年6月の学術審議会答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」)産学協力モデルが明瞭に提起されるほど煮詰まりそうな動きは今のところ見えないが、少なくとも、会計制度や勤労上の制約の緩和、TLOの法的裏づけ確立、連携のための新組織編成、といったアカデミズム側の管理運営面での改革が進められている。企業はこの動きを活用して、「知恵」を生む仕組みを考案していくべきだろう。
 特に、アカデミズムの資源をどう産業利用するかのモデルを作り、研究者を企業の研究開発へ組み込み可能な体制構築を始める必要があろう。
 ファインケミカル分野で、企業が一番欲しい将来技術の研究開発とは図中の矢印2だ。
 それに加えて、矢印3のように、異なる領域への技術展開の期待もある。

 ところが、日本のアカデミズムの基礎研究と称される活動のほとんどは「理論整備」であり、矢印2や3の動きに関与していない。

 全くのミスマッチである。「理論整備」の成果を産業に活用しようといくら活発に動いたところで、矢印2や3の動きではなく、矢印1aが活性化することになりかねない。もともと、矢印1aは、弱い動きではあったものの、以前から協力関係は存在している。今後、制度上のサポートが構築されれば、この動きが効率的にはなるが、企業の競争力の飛躍的向上への寄与は限定的だ。企業にとって重要なのは、矢印1aの活性化ではなく、図中の矢印1b、1cの動きがアカデミズムに登場し、本格的に矢印2の動きが強化されることである。
 この動きを促進させるように、企業側が最適なアカデミズム機関や研究者を選別していくことが、協力体制構築で成果をあげるための第一歩だ。
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