研究開発費カット策中止…

 98年度、99年度と連続して研究費削減に踏み切った日本企業が多かった。この先どうなるのかと注視していたが、2000年度(予定)の研究開発費に関しては、ゴムを除く、すべての製造業種で増加に転じたという。(東洋経済 統計月報 2000年9月号)2001年度も、一部の業種を除けば、鈍化するものの引き続き伸びが期待できそうだ。

 エレクトロニクス・IT系の電気機器業が2000年度は4.0%増、自動車を中心とする輸送用機器業が4.6%増である。2001年の予定も、各々4.2%増と4.7%増であるから、研究開発主導の経営方針が定着したといえよう。

 ところで、鉄鋼・非鉄金属・金属製品、化学、石油/石炭製品といった素材系業種の企業は、98年度前後に大鉈をふるい、研究開発部隊のスリム化を図った。
 これを見て、「すべての産業の基礎たる素材分野の知的営みが弱体化するのではないか。」と心配する人が多かった。特にユーザー業種は、素材企業の開発能力に依存している領域が多いため、皆、その挙動を見つめていた。
 この先も、素材企業が削減を続けるつもりなら、関係している事業を研究開発部隊込みで引き取ることを考えるべし、と主張した経営幹部もいた位だ。(といっても、ユーザー産業も、経営的に余裕が無い状態だったから、空元気なのだが。)

 研究開発費は経理上はコストだが、役割からいえば将来への投資である。従って、研究開発費の大幅削減はコスト削減策というより、「自業種の将来性は見込み薄」との判断に従った意思決定と見なされる。2000年度の数字がどうなるかは、その観点では、分水嶺だったといえよう。
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