自動車の研究開発(2)…

 カール・ベンツがガソリンで動く乗用車の特許を取得したのが1886年である。その後数十年で自動車技術の基本骨格は完成した。これ以後、明らかに格段の進歩と呼べるのは、新材料の利用と、AT(オート・トランスミッション)や電子制御といった新技術だけと筆者は考える。従って、社会要請に忠実に対応し、生産技術面と付加機能を中心に、常に改良を加えることが、自動車産業の研究開発のポイントだった、といえよう。

 CAD/CAMの普及が進むと、様々な顧客ニーズに応えるために、QFD展開で最適バランスを図りながら、設計の高度化が簡単にできるようになる。現行の自動車技術は、ほぼ完成領域にある。新技術を登用するといっても、その本質は「斬新な改良」と考えるべきである。従って、新技術の登用方針は自社商品のコンセプトに応じて決めればよい。

 例えば、下図にシート開発の4つの方向を示す。

 第1象限(スペシャリティ)はコストもかかるが、理論的には座りごこち最高というもの。リサイクル等のマイナス面もあるが、ドライブの最適性を訴える挑戦的なコンセプトに利用される技術だ。
 一方、第2象限(マジョリティ)は現行の普及技術の範囲で最高の性能を上げるように細かな詰めを行うものだ。コスト/パフォーマンス中心のコンセプトである。
 第3象限(エコノミー)は、低コストを実現する考え方といえよう。実使用感での「安かろう悪かろう」を払拭するための技術が重要になる。
 第4象限(ラグジュアリー)は、高級感を打ち出すための道具となりうる技術を登用する。イメージと実感を与える技術といえる。

 自社のブランド・コンセプトとコーポレート・イメージに合わせて、どの技術をどのような役割で登用するかを検討することが極めて重要である。例えば、「オーソドックスな技術展開を図る会社」と互角に戦うためには、「イメージアップのためなら何でもする会社」を目指すことも、優れた技術マネジメントだ。
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