クラスター型産業の研究開発(2)…

 極く狭い領域のベンチャーでも、革新的なコンセプトを持ち、技術的に高度なら、事業立ち上げは困難ではなくなった。ビジネスに必要な他の機能は社外が補完してくれるからだ。
 しかも、補完企業の力量は高く、その分野でピカ一である可能性さえある。技術優位な勝ち組み企業がスクラムを組み易い仕組みができているだ。

 一旦、どこかで技術革新の流れが始まると、この成果を活用しようと一斉に動きが始まる。新たな革新が生まれると、自動的にこの成果が伝播する。これが、シリコンバレーのコンプレックスの成功を支える原動力だ。
 下図のように、
 ・あるベンチャーがキー製品で成功すると、その製品応用で成功する企業がでる。
 ・応用が広がると、最初の製品にフィードバックされ、企業はさらなる飛躍を遂げる。
 ・同時にこの応用は、次ぎの成功を呼び込む。
 この成功を、全体の仕組みに還元する鍵を握るのがベンチャーキャピタルと大学だ。成功ベンチャー・オーナーが保有する莫大な余剰資金はベンチャーキャピタルとして機能しはじめる。次ぎの革新を促進するリスクマネーに変貌する。しかも、この資金の一部は大学に還流され、高度な人材を集める資金に流用されていく。裕福な大学に有能な頭脳がどんどん集まってくるのは必然である。

 こうした仕掛けが機能するのは、ベンチャーキャピタリストが「銭勘定」の財務経理畑投資家ではなく、「技術の将来性を読める」技術畑の人々から構成されているからだ。ベンチャーキャピタルは将来技術を掘り起こす技術屋集団なのである。しかも、ベンチャー創業者が獲得した膨大なキャピタルゲインも流入する。大企業の社内での、基礎研究への資金投入と同じ仕組みが、シリコンバレーのコンプレックスのなかに存在するのだ。

 しかも、先端技術登用を加速させる仕組みである。従って、技術進歩のポテンシャルが大きい産業ではとてつもない威力を発揮する。コンプレックスの動きに参加しなければ、流れについていけない可能性さえある。

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