問題3:創造的破壊…

 日本の技術マネジメントに危機感が薄い3つ目の理由は、「破壊無しに飛躍可能」と考える哲学にある。

 3. 飛躍のためには創造的破壊が不可欠、とは考えていない。

 新しい産業が勃興すれば、旧来の産業内で廃れる部分が発生するのは必然である。米国は、この原則が徹底している。従って、一旦没落の兆しが見えれば、非効率な部分は市場から駆逐される。

 変化に対応できそうもないと判明すると、蓄積してきた資産やヒトを惜しげも無く切り捨てる。営々と築きあげてきたものであっても、新しい息吹が重要であれば、破壊的な変化を受け入れる。全体で見ると、このような激しい変化に要するコストは大きいから、必ずしも米国流の仕組みが優れているとはいえない。しかし、技術革新の時代には、新産業勃興による膨大なリターンが得られるから、明らかに優位な仕組みといえよう。
 日本では、この「破壊」ができない。徐々に変化させようという考え方だ。短期的にはコストは小さくて済むが、変化は微々たるものだ。そのため、新産業の離陸はとてつもなく遅れる。結局、経済全体の低迷が続き、長期的には、とてつもないコストを支払っていることになる。

 日本の上場企業の2000年度の経営数値を見る限り、雇用、設備、総資産のどれをとっても過剰感はたいして払拭されていない。IT時代は過酷であり、同一業種で同じような運営をする企業が何社も存在することはあり得ないことはわかっている筈だ。ところが、抜本的な施策を打ち出す企業は少ない。(といって、勝てる根拠があやふやな企業合併で、名目上の企業数を減らしても、解決に繋がる訳ではない。)

 IT技術の浸透で産業構造はドラスティックに変化し続けており、今や生産設備や訓練された沢山の従業員を持つことは、たいした強みではなくなってきた。このような状況で、過剰を少しずつ減らして環境に適応させれば生き延びれると考えるのは、甘い見通しではなかろうか。
 スリム化が緊要なのは、強靭な収益力をベースにしない限り、将来の飛躍のための知恵を生み出す仕組みが構築できないからだ。少しずつ変身していたら、このような仕組みができるまでにとてつもない時間を要する。変化が激しい時代に、悠長な対応を続けていて、生き延びることができるとは思えない。

 飛躍しようと考えるなら、意味が薄い事業への支援打ち切りを最初にすべきだ。スリム化で余裕が生まれれば、新たな挑戦も力を発揮できる。さらに、既存事業への多少の悪影響があっても、挑戦できる体制構築が必要だ。既存事業側の反撥を気にしながら研究開発していたのでは、大きな新事業など切り開けまい。「創造的破壊」は避けて通れない。
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