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■■■ 古事記の歴史観 [2018.11.14] ■■■
山の辺の道時代(東国)

ヤマト政権との言い方をよく見かけるが、瀬戸内〜大和川一帯を抑える奈良盆地山の辺の道地区の豪族を基盤とする勢力が樹立したとのイメージで呼ばれているように映る。
この見方、間違いではないが、目を曇らせることになるのではなかろうか。

どこが拙いかと言えば、中央政権のイメージが消えてしまうから。と言うより、豪族の集合体と考えるべき政治体制であると見なしているのかも知れないから、それで良いとされているのかも。
しかし、「古事記」をどう読んでも、そのような風合いの記述は無いのである。
その感性に従えば、基本構造を繰り返すが、「奈良盆地内の豪族集団」と「中央と各地方の豪族の連合体」という2重構造が見てとれる。殺戮合戦とも言えるほどに皇位継承が凄まじいのは、系譜に記載されているように、「奈良盆地内の豪族」が皇族と婚姻関係を結んでいるから。それは中央での支配圏争奪、現代で言えば政治の方向性を決める意思決定そのもの。
二重構造となるのは、このような奈良盆地の豪族が地方の大豪族と緊密な紐帯を持っている点で、いわば、地方の意向を中央の豪族が代弁することになる訳で、当然ながら自分達に都合の良い皇位継承が図られることになる。見かけは、盆地内の勢力争いだが、全国規模の角逐と言うべきだろう。
力を得た豪族とは、女系を通じて天皇と繋がり、場合によってはその御子を勢力の代表として迎えることも可能になる。実に単純な政治構造だが、天皇に反旗を翻すと、他のすべての豪族が連合を組んで一族種滅のリスクがあるので盆地内は皇位継承の血みどろの戦いだけで済むことになるし、地方豪族にとってみても、「鐵の道」を制している中央政権に反する動きは自滅を意味しかねないから、地方豪族間での勢力争いで中央政権内での影響力を減じるような動きを慎むことになるのは自明。
なかなかよくできた仕組みとは言えまいか。

すでに述べたように、中央政権が圧倒的な力を持つようになったきっかけは、「鐵の道」を支配したから。鉄がふんだんに入ってきたからこその、土木工事や水稲栽培の生産性の飛躍的向上。
吉備勢力とは、そういう観点では、いかに大繁栄していようが、瀬戸海経済圏の地方豪族の1つであり、輸入ルート確立の海軍力を担っていたに過ぎないとも言える。

「ヤマト」政権の圧倒的強味は、吉備との連合にに根差しているのではなく、各地と紐帯を持つ"奈良盆地内"豪族の集合体政権である点。
換言すれば、欠史と呼ばれる"葛城〜金剛〜巨勢時代"に作り上げた遺産にそのまま乗っかった訳で、この地だけが当時のヒト・モノ・情報の交流地点と化してしまったのである。
その交流の根幹とは、鉄製品の国内流通と農業土木を兼ねた前方後円墳造成技術ではあるが、おそらく、丈夫な容器でもある須恵器や、銅鏡の製造拠点も擁していただろう。

つまり、奈良盆地勢力は、日本海側や瀬戸海の勢力とは違い、経済力が急速に伸びる東日本の地方豪族の経済力をバックボーンにすることができたということ。
盆地内での権力闘争に勝利し、「ヤマト」中央政権を安定化させれば、ほぼ自動的に地方豪族を従えることができるようになったと見てよいだろう。

時代的にこの頃に該当しているのか、定かではないものの、地理的に以下の辺りまで交流が進んだ可能性がある。
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●伊賀
  御墓山@上野188m🈭
  馬塚142m🈭
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●美濃
  昼飯大塚150m△🈭
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●松本並柳
  弘法山66m[前方後方]🈜
●長野
  川柳将軍塚91m🈜
  姫塚91m🈜
●甲府
  甲斐銚子塚@笛吹川左岸曽根丘陵169m🈜
  岡銚子塚@東八代92m🈜
  小平沢@下向山(甲府盆地南東縁)45m🈜
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●上毛野
  太田天神山@太田210m🈭
  別所茶臼山@太田165m🈭
  梵天山@常陸太田151m🈜
  七輿山@藤岡146m🈝
  吾妻135m🈝
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  浅間山@高崎倉賀野173m🈜
  舟塚山@石岡186m🈭
  芦間山@下館140m🈜
  内裏塚@富津144m🈭
  白石稲荷山@藤岡白石165m🈭
  水戸愛宕山135m🈭
〇行田
  二子山13m🈝
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●福島
  亀ヶ森@河沼会津坂下129m🈜
  会津大塚山@会津若松114m
  玉山@いわき112m
  塚前@いわき95m
●宮城
  雷神山@名取植松168m🈜
  遠見塚@仙台110m
  青塚@大崎100m
●山形
  南森/狸森@南陽150m🈭
  稲荷森/狐山@南陽96m🈭
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(ご注意) インターネットリソーシスの、Wikiと公的らしき組織の様々な目的の解説から引用しているが、情報そのものに矛盾点は少なくない。出典未詳が多く、情報の質はまちまちだし、著者名も記載されていないのが普通。・・・そのような情報の集成として御覧になって頂きたい。それに加えて、小生が一部改変している。
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