■■■ 古代の都 [2018.12.4] ■■■
[003] 宇都志國玉神の宮
大国主命譚は神話だらけ。この箇所は、「古事記」で一番精力的に伝承が収録されていると言ってよかろう。天皇系譜に直接関係する訳ではないのに注力しているのだから、この時代をよく理解せよ、ということか。
その割には、５時代を寄せ集めただけの雑炊的な印象は否めない。
それと、おおいに気になるのは、統治期における宮地がはっきり記載されていない点。
[1] プレ統治
[前半] 八十神による迫害:大穴牟遅神
[後半] 根堅州国:葦原色許男神
[2] 周辺国との婚姻関係締結:八千矛神
[3] 少名毘古那(神産巣日御祖命の御子)との共同統治
天之羅摩船で来訪
神産巣日御祖命、"爲兄弟而 作堅其國"との命
"少名毘古那神 度于常世國"で終焉
[4] 御諸山上神の協力体制下での統治
光海依來之神が渡来
"能治我前者 吾 能共與相作成 若不然者 國難成"、と。
[5] "国譲り"
順に見ていこう。
------------------------------------------------------
[1] プレ統治
[前半] 八十神による迫害:大穴牟遅神
[後半] 根堅州国:葦原色許男神
------------------------------------------------------
大穴牟遅オオナムチノ神という名称の由来が不透明である。穴はアナでなくナと読むらしいが、オオとムチが尊称だとすれば、地主ナヌシを意味するのだろうか。
そもそも、何故に八十神から蔑視されているのかわからないところがある。須佐之男命の時代からの穴炉製鉄に携わってはいそうだが、新興勢力扱いされているからだ。山岳部で大量に木々を伐採するから禿山化箇所が目立つようになり、嫌われたのだろう。辛うじて農具に使えるにすぎなかったから、低い地位に貶められていたのだろう。系譜が詳しいが、７代もすれば子孫は八十どころではない訳で、系図は男系だが、娶り合戦が繰り広げられることは、一種の女系が成り立っていたことを意味していよう。
須佐之男命┬櫛名田比賣
┼┼┼┼┼└─八嶋士奴美神
┼┼┼┼┼┼┼〃┬木花知流比売
┼┼┼┼┼┼┼┼└─布波能母遅久奴須奴神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼〃┬日河比売
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─深淵之水夜礼花神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼〃┬天之都度閉知泥神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─淤美豆奴神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼〃┬布帝耳神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─天之冬衣神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼〃┬刺国若比売
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─大国主神
そのような扱いを受けていながら、娶る競争で勝った理由が曖昧である。しかも、その結果、殺される。
ところが、助けられて生き返えり、対処するために木國之大屋毘古神之御所に行くように言われる。今迄活動してきた日本海沿岸地域から離れて黒潮側にある紀伊の国へ行くというのも、かなり無理がある。意宇川上流の熊野坐神社/熊野大社(御祭神:熊野大神櫛御気野命)＠松江 八雲辺りを指しているのならわかるが。
訪問すると、熊野大社から山一つ越えた所にある根堅州国の神の御殿(木造)に行くように言われる。
すると、そこは試練を課す場。南方のトーテム部族の成人通過儀礼を彷彿させる筋。恐ろしいものとして、蛇、百足と蜂、が登場するが、いずれも長命仙薬原料として南方で飼育されていた可能性がありそうな生物である。当然ながら、すべて見事クリアするが、力の限り奮闘したのではなく、すべて成り行きまかせで周囲に救ってもらう話。自力で合格を勝ち取ったストーリーにはなっていないのが一大特徴。ともあれ、最終的には、合格を認められ、将来の姿が約束される。・・・
意禮[オレ] 爲大國主神 亦 爲宇都志國玉神
而
其我之女 須世理毘賣 爲嫡妻
而
於 宇迦能[ウカノ]山之山本
於 底津石根 宮柱布刀斯理[フトシリ(＝太敷)]
於 高天原 氷椽(＝千木)多迦斯理[タカシリ(＝高知)] 而 居 是奴也
ここで宮の姿が描かれている。
高天原は天空に存在しているとされており、宮の千木がそこに届く訳で、バベルの塔的な印象を与える点から見て、従前の海原信仰は消え失せている。
この宮は、まさに出雲大社の姿である。
たぶん、一番重要なのは、大神の持っていた３種の神器(生大刀、生弓矢、天詔琴)持ち出しを、下賜とみなされた点。統治者としての正統性が保証されたことになるからだ。
(これまでの時代は、石鏃の弓で攻撃し、動けなくなったところで大刀で止めを刺す方式の闘いだったことがわかる。勝気を占うには琴の演奏。)
この結果、追避其八十神が実現。
国の統治者の"始"ということに。
始作國也
「出雲国風土記」意宇郡 母理郷では、・・・。
我造坐而 命國者 御皇孫命 平世 所知依奉 但八雲立出雲國者我静坐國
------------------------------------------------------
[2] 周辺国との婚姻関係締結:八千矛神
------------------------------------------------------
大国主命として統治者になってから、宮についての記述は無い。このことは、国を治めるために宮は転々としたという意味かも。
大国主神┬須勢理毘売
┼┼┼┼└─n.a.
┼┼┼〃┬沼河比売＠高志国(糸魚川産"翡翠")…"八千矛"
┼┼┼┼└─n.a.…姫川→諏訪の建御名方神ではなかろうか。
┼┼┼〃┬多紀理毘賣＠宗像 奥津宮
┼┼┼┼├─阿遅鋤高日子根神…その後の天若日子神葬儀に登場。
┼┼┼┼└─高比売命/下照比売命(⇒天若日子神妻)…兄妹婚を示唆か。
┼┼┼〃┬神屋理毘賣…社建築担当の一族か。
┼┼┼┼└─事代主神
┼┼┼〃┬鳥耳神(八島牟遅能神の娘)
┼┼┼┼└─鳥鳴海神
┼┼┼┼┼┼〃┬日名照額田毘道男伊許知邇神
┼┼┼┼┼┼┼└─国忍富神┬葦那陀迦神/八河江比売
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─速甕之多気佐波夜遅奴美神
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼〃┬前玉比売(天之甕主神娘)
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼│ …"埼玉(行田)"か。
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─甕主日子神
┼┼┼〃┬n.a.
┼┼┼┼└─建御名方神
長江下流(良渚＜B.C.3200-1800年＞)では、"翡翠"玉が珍重されていたから、糸魚川から大陸に運ばれていたと考えてよいだろう。その輸送ルートを一手に押さえたから鋭利な鉄器(武器と木工用具)を入手できるようになり、鉄製の農具と土木用具と青銅器も大量供給できたから、国が成り立ったのだろう。八千矛神とされているから、祭司用具的にも統一が図られたとみてよさそう。黄金色に輝く八千矛を掲げた船団が到来しただけで、勝ち目無しと感じたろうから、おそらく、どの地もすぐに平伏しただろう。
実際、荒神谷(埋納壙)遺跡＠出雲 斐川神庭西谷から銅剣358本、銅鐸6口、銅矛16本が出土し、その隣の山越え地点の加茂岩倉遺跡からは大小入れ子の銅鐸39口出土している。
------------------------------------------------------
[3] 少名毘古那(神産巣日御祖命の御子)との共同統治
天之羅摩船で来訪
神産巣日御祖命、"爲兄弟而 作堅其國"との命
"少名毘古那神 度于常世國"で終焉
------------------------------------------------------
大陸江南の地で国を売りつした"越"は記号的に用いるために文字は存在したようだが、伝達用にはほとんど使用しなかったようである。当該地域の出土状況からみて漁撈はお手の物なのは当たり前だが交易が盛んだったようである。もちろん、水田稲作も盛んだったようだが、熱帯性ジャポニカ種であり粗放的栽培と見てよいのでは。
この仕組みを渡来人活用で整備したことの記憶が、少名毘古那との共同統治だろう。
この時代、大陸からは大勢の難民が渡来してきたのは間違いない。稲作農耕文化とは無縁の北方勢力が南下してきたからである。土着異民族絶滅でテリトリー拡大を図る体質であり、労働力として残すといっても、生贄・農奴・兵士にさせられるだけだから、逃亡発生は当たり前。
黒潮航海で逃亡可能なのは、そのスキルを持っていた層のみであるし、大国主命勢力に上陸を認めてもらいさえすれば安寧な生活ができるのだから統治に協力するのは当然の姿勢。
渡来者の大半は船山列島からの出航者で、朝鮮半島からは稀な筈。山東半島出航者は半島に到着するものの、そこは玄界灘側九州勢力と一体化している漁撈中心の"倭人"の地。(南西端の多島海沿岸は農耕適地で、そこの勢力とは同根だろう。)沿岸を避けて内陸に入るしかない。そこは、農耕生産力は低いが、鉱物資源については有望な地。その支配者の道を選ぶ以外に道はなかったろう。
【中国の代表的遺跡】推定年代の信頼性は不明
●(東北域)遼河流域 内モンゴル 黒竜江 吉林 遼寧
興隆窪＜B.C.6200-5400年＞…玦[翡翠玉]&龍
新楽＜B.C.5300-4800年＞
趙宝溝＜B.C.4500-4000年＞
紅山&富河＠上流＜B.C.3400-2300年＞
夏家店上層＜B.C.2000-300年＞
夏家店下層＜B.C.1100-700年＞
●黄河上流/源流 甘粛 寧夏
老官台(大地湾 白家村)＠甘粛～陝西西部＜B.C.6500-5000年＞
仰韶†
馬家窯＠甘粛～青海＜B.C.3300-2700年＞
半山＜B.C.2700-2400年＞
馬廠＜B.C.2400-2000年＞
斉家＠甘粛＜B.C.2300-1800年＞
四壩＜B.C.1950-1500年＞
●黄河中流=中原 陝西 内蒙古 山西
裴李崗@河南
磁山＠河北南部
賈湖
李家村＜B.C.6500-5000年＞
仰韶†＠河南～陝西～山西 5000-3000年＞
龍山††＠河南＜B.C.2800-2000年＞
二里頭*＝夏＠河南＜B.C.1900-1500年＞
二里岡**＝殷(商)
周
●黄河下流 河南 河北 山東
後李＠山東＜B.C.6500-5500年＞
北辛＠山東＜B.C.5300-5000年＞
大汶口＠山東～安徽～河南～江蘇 4300-2600年＞
龍山††＠山東＜B.C.2600-2000年＞
岳石＜B.C.1900-1500年＞
●長江上流 雲南 四川 重慶
営盤山＜B.C.3100年＞
宝墩(龍馬古城)＠成都＜B.C.2800-2000年＞
三星堆＜B.C.1500年-＞
巴蜀
二里岡**＝殷(商)
●長江中流 湖北 湖南 江西
玉蟾岩(仙人洞,呂桶環)
彭頭山＠湖南 北西(+城背溪 皂市)＜B.C.7000-5800年＞
湯家崗
城背渓
大渓＠三峡＜B.C.5000-3300年＞
屈家嶺＠湖北～湖南＜B.C.3500-2600年＞
石家河＠湖北＜B.C.2500-2000年＞
青蓮崗/龍山††＠湖北＜B.C.2400-2000年＞
二里頭*二里岡**
呉・越***＜B.C.1500年-＞
●長江下流 安徽 江蘇 浙江 上海
跨湖橋＜B.C.6000-5000年＞
馬家浜＠浙江 杭州湾北部～太湖＜B.C.5000-4000年＞
河姆渡＠浙江 余姚～舟山群島＜B.C.5000-3400年＞…太陽紋/縄紋&動植物紋飾
崧沢＜B.C.4000-3000年＞
良渚＠デルタ域 浙江＜B.C.3200-1800年＞…神人獣面紋 琢玉
馬橋＜B.C.1800-1200年＞
湖熟
呉・越***＜B.C.1500年-＞
東周＠江蘇・楚
草鞋山遺跡＠江蘇 蘇州 陽澄湖
●東南 福建 江西 広東 広西 湖南南部 紅河下流 台湾
縄紋陶器&甑皮岩＠桂林＜B.C.7000-5500年＞
復国墩＜B.C.5000-3000年＞
＜B.C.3000年～＞
踏泥山 石峡 碾玉磚 鳳鼻頭 河宕
●雲貴高原
白羊村＜B.C.2200-2100年＞
大龍潭＜B.C.2100-2000年＞
表紙＞
(C) 2018 RandDManagement.com