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■■■ 古代の都 [2018.12.30] ■■■
[番外-30] 墓制と「古事記」
(25:頭椎之大刀)

弥生期以降の墳墓からは儀仗用と思われる装飾付の大型の刀が出土し、前方後円墳になると副葬品の主流化するが、そのデザインは様々。ただ、時の流れに沿って、次第に装飾性が強まっていく。貴金属使用や装飾方法の進歩に合わせ、細かなところで豪華さが競われ、模様等も変化する訳だ。そんなところからみて、この手の刀は観念的には威信財以上ではなさそう。
副葬品として、鏃のような、いかにも武具的な品が減り、非実用副葬品が重視される流れが見て取れる。

おそらく、装飾大刀とは軍事的リーダーの証(軍事権認可)がなのだろう。但し、軍事組織にはヒエラルキーがあり、その仕組みと整合させる必要があるから、そのような体制が完備したのはおそらく飛鳥時代。前方後円墳で威信を発揮する統治スタイルから、装飾大刀で公認されている軍事リーダーによる力で治安を司るスタイルに変ったということ。

俯瞰的にみれば、「古事記」末尾の脱前方後円墳の時期は、墳墓の形式と規模、遺骸埋葬構造、副葬品のすべての面での均一化が進められたことになろう。叙事詩の題材皆無期に突入したということ。

我々が見る墳墓とは支配層用のものだけだが、その範囲でさえ、たとえ傑出した首長や大王が存在したところで、特別な造成を行うことがなくなったということ。細かな差違による階位別仕様での差別化以上ではないのである。

そういうことで、装飾大刀を十分検討したいところなれど、鉄は腐食が進むし、木は朽ち果てるので、刀の実態を知るのはことのほか難しい。比較的しっかりと残る把頭の形式で分類するしかない訳だが、今のところその形態上の意味はわかっていない。首長の好みや、地域的流行、工房職人の都合、等々あろうが、祖型からの系譜が存在していそうな感じがする。
 <環頭柄頭("狛剣/高麗剣")
 <袋状柄頭
(折衷的)
 ・円頭
   圭頭
(下が四角で上がなだらかな山形:大陸の玉器"圭"似)
 ・方頭
 ・鶏冠頭
 ・頭椎
(塊状)
 <他
(倭風)>>
 ・楔形
 ・捩環付楔形


渡来品の祖型(モデル)管理や製作工房支配が可能なのは、大王家だろうから、その系譜に位置付けてもらえた層だけが装飾大刀を所有できたからこその、威信財だろうから、特徴的なデザインは、特別な係累に属すことの証と見てよいのでは。

「古事記」での登場シーンを見ておこう。

先ず、降臨の際に大刀持ちが登場する。頭椎タイプだ。この形は、側近的軍事部隊のリーダーが所有する取り決めがありそう。
天忍日命と天津久米命の頭椎之大刀
 天忍日命天津久米命二人
 取負天之石靫
 取佩
頭椎之大刀
 取持天之波士弓 手挾天之眞鹿兒矢
  立御前而仕奉
 故其天忍日命<此者大伴連等之祖>天津久米命<此者久米直等之祖也>


降臨部隊の編制は、天石屋戸で活躍した思金~が指名した神々とほご同一だが、上記の大刀武装勢力は新たに加わったように見えるが、そうでなかった可能性もある。鏡(石凝姥命)と珠(玉祖命)だけでなく、鍛鉄(天津麻羅…神でも命でもない。)も用意されたとされているからだ。
 取天安河之河上之 天堅石 取天金山之鐵而 求鍛人 天津麻羅
(刀)と青銅(鏡)を混同する訳がないから、この鍛人は頭椎刀を作ったのであろうか。狛剣だったりして。

宇陀で弟の宇迦斯の力を得て、兄を討ったが、忍坂@桜井の大室に到着すると、尾の生えた土雲の猛ける集団が待ち構えていた。そこで饗宴で呼び込み頃合いを見て斬殺。
道臣命と大久米命の刀
 爾 大伴連等之祖道臣命久米直等之祖大久米命二人
  召兄宇迦斯罵詈 云
 伊賀所作仕奉於大殿内者意禮先入明白其將爲仕奉之状 而
 即 握横刀之手上弟由氣矢刺 而 追入之時乃己所作押見打 而 死
 爾 即 控出斬散故其地謂宇陀之血原也


さらに、軍勢は土雲を討ち平定。軍国主義愛好者のフレーズ"撃ちてし止まむ"で有名になった久米歌の場面である。
久米の子 八十膳夫の刀
 天~御子之命以饗賜八十建
 於是宛八十建設八十膳夫 毎人佩刀 誨其膳夫等曰
  聞歌之者一時共斬 故明將打其土雲之歌曰
   意佐加能 意富牟盧夜爾 比登佐波爾 岐伊理袁理 比登佐波爾 伊理袁理登母
   
[忍坂の 大室屋に 人さはに 来入り居り 人さはに 入り居りとも]
   美都美都斯 久米能古賀 久夫都都伊 伊斯都都伊母知 宇知弖斯夜麻牟
   
[みつみつし 久米の子が 頭椎い 石椎い持ち 撃ちてし止まむ]
   美都美都斯 久米能古良賀 久夫都都伊 伊斯都都伊母知 伊麻宇多婆余良斯
   
[みつみつし 久米の子が 頭椎い 石椎い持ち 今撃たば宜し]
 如此歌而拔刀一時打殺也
 然後 將撃登美毘古之時 歌曰
   美都美都斯 久米能古良賀・・・宇知弖志夜麻牟
  
[みつみつし 久米の子等が・・・撃ちてし止まむ]
 又歌曰
   美都美都斯 久米能古良賀・・・宇知弖志夜麻牟
  
[みつみつし 久米の子等が・・・撃ちてし止まむ]
 又歌曰
   加牟加是能 伊勢能宇美能・・・宇知弖志夜麻牟
  
[神風の 伊勢の海の・・・撃ちてし止まむ]
 又撃兄師木弟師木之時 御軍暫疲 爾 歌曰・・・


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