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■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.2] ■■■
[366]宇氣比は誓約と同義ではなさそう
《うれづく[宇禮豆玖]》を取り上げたので、《うけひ[宇気比]》も見ておこう。
《うけひ》も、神に誓った賭けと言えなくもないが、言葉を替えているだけでなく、かなり重要そうな内容の賭けになるので、両者の語義は違うとすべきだろう。しかし、その差異を明確にしようとすると、結構難しいことに気付かされる。

それは《うけひ》の概念が曖昧なせいもある。
漢字表記は"宇気比"だが、解説の多くの漢字表記では"セイ-ヤク[誓約]"になっていることも大きい。まさか、同義ということでもあるまいし。

・・・と言うのは、常識的には、名詞"ウケヒ"は以下のどちらかの動詞が発祥と考えられるからでもある。
  うけ-い-れる[⇒受容 受納 享入]
  うけ-ふ[誓]⇒うけ-い@連用形
マ、後者が適合すると言ってよさそうではあるものの。
おそらく、そこから<誓⇒祈>という展開も生まれて行くのだろうが。

宇気比とは神の裁定=神明裁判を仰ぐと言う意味なのだろうが、問題は、そこに含まれる行為はどこまでか、はっきりしていない点。
 潔白証明=呪術裁判
 未来予見=吉凶占い…天候 戦争 婚姻 疾病 出産 etc.
 勝負"戯"=博奕/賭博…六博[=双六] 棋碁 etc.
 勝負"力"=相撲 etc.

例えば、木花之佐久夜毘賣の出産は《うけひ》に当たらないのか気になる。戦争に勝てるかどうかお伺いを立てるための宇気比狩猟は亀甲占いとどう違うのかもよくわからない。専門家不要ということなのだろうか。そうだとすれば、特別な神や王の場合にのみ適用される自己占いと言えなくもない。

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爾 天照大御~詔:
「然者 汝心之C明何以知」

 「それなら、汝の心が清明であることを、
   どうやって知ることができるのか?」

於是 速須佐之男命答白:
「各宇氣比[ウケヒ] 而 生子」
 「各々、誓約をして子を生もう。」
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爾 大山津見~ 因返石長比賣 而 大恥
白送言:
「我之女二並立奉由者 使石長比賣者
 天~御子之命 雖雨零風吹 恒如石而常堅不動坐
 亦 使木花之佐久夜毘賣者

 如木花之榮 榮坐
 宇氣比[ウケヒ][][より] 貢進
 此令返石長比賣 而 獨留木花之佐久夜毘賣
 故 天~御子之御壽者 木花之阿摩比能微[あまひのみ]
故是以至于今 天皇命等之御命不長也

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故後 木花之佐久夜毘賣參出 白:
「妾妊身今臨產時 是天~之御子 私不可產故請」
爾 詔:
「佐久夜毘賣一宿哉妊 是非我子必國~之子」
爾 答白:
「吾妊之子 若國~之子者產不幸 若天~之御子者幸」

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故 科曙立王令宇氣比[ウケヒ]白:
「因拜此大~誠有驗者 住是鷺巢池之樹鷺乎宇氣比[ウケヒ]落」
如此詔之時 宇氣比[ウケヒ]其鷺墮地死
又詔之
宇氣比[ウケヒ]活」
爾者 宇氣比[ウケヒ]者更活
又 在甜白檮之前葉廣熊白檮 令宇氣比[ウケヒ]枯 亦 令宇氣比[ウケヒ]
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於是 息長帶日賣命於倭還上之時
因疑人心一具喪船御子載其喪船
先令言漏之御子既崩

如此上幸之時 香坂王 忍熊王 聞 而
思將待取 進出於"斗賀野" 爲宇氣比[ウケヒ][ガリ]
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於是天皇(弟 男淺津間若子宿禰命/允恭天皇)
愁天下氏々名々人等之氏姓忤過 而

於"味白檮[=甘樫]"之"言八十禍津日前"
玖訶[くが]瓮[=探湯瓮[くかべ]]
定賜天下之八十友試$ゥ也


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