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■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.31] ■■■
[395]諺"不得地玉作"とは
諺由来譚が⓫伊久米伊理毘古伊佐知命/垂仁天皇段に記載されている。・・・
  是以選聚軍士中力士輕捷而宣者
  取其御子之時 乃掠取其母王
  或 髮或手當隨取獲 而 掬以控出
  爾 其后豫知其情 悉剃其髮以髮覆其頭
  亦 腐玉試O重纒手 且以酒腐御衣如全衣服
  如此設備 而 抱其御子刺出城外
  爾 其力士等取其御子 即 握其御祖
  爾
   握其御髮者御髮自落
   握其御手者玉至諮
   握其御衣者御衣便破
  是以 取獲其御子 不得其御祖
  故 其軍士等還來奏言
   御髮自落
   御衣易破
   亦 所纒御手玉歯ヨ絶
  故 不獲御祖取得御子
  爾 天皇悔恨 而 惡作玉人等皆奪其地
  故
曰:
   
不得地玉作

「"諺"とは何か?」の解答はかなり難しい。

例えば、上記は「[ところ]を得ぬ玉作」として古代の例としてあげられており、"玉造の人々は土地を持たない。(一定の場所で玉を加工しない)"という、そのままでは訳のわからぬ意味の解釈がなされている。しかし、おそらく、それでよいのである。玉加工部民は、どこにでも行けという措置が下されたということで。

もちろん、こうとも読める。・・・
恋しい皇后の確保が不首尾に終わり天皇の不興をかい、誰かがその責任を負うことになる。
そこで、職業部である玉作が槍玉にあげられ、成功していれば恩賞が期待されていたのに、逆に土地を召し上げられた。

さらには、天皇の鬱憤晴らしの対象となったことを冗談に転換したように思えないでもない。上述の説明によれば、[つち]ではなく野老[ところ]と読むらしいから、準備万端で山芋堀りに行ったものの、肝心の蔓が切れてしまって見つからなかったという意味の可能性もあろう。

どう解釈しようが、ハズレとは言いかねる。要は、寓意は場の状況に合わせて、いかようにもとれるからである。倭国での、アドリブOKの口誦句とは、本来的にそういうもの。筆記文章ありきの「論語」的な至言=格言と、口誦たる諺は根本的に異なるジャンルなのだ。

 《諺》=伝言(民間口頭流伝)
・・・国語辞書的解釈なら、"古くから人々に言い慣らされた、寓意が含まれている言葉"という以上ではないが、これでは余りにブロード過ぎなんでも入ってしまいかねない。しかし、絞ろうとすると、落ちてしまう諺が出てくるので、それはできかねるのだ。
これは現代人だから感じることではなく、「古事記」成立時点でも同じことでは。
太安万侶はそこらを踏まえて、この一行を入れたのではないかと思う。話の筋は、御子だけ奪回できたものの、皇后は無理だったというに過ぎず、細かく記述する意味はなさそうだから。

諺とは文字読みではなく、口誦言葉であることを、伝えたかったのだろう。口承句の"言技"であろ、文字化されたクリシェではない、と。
換言すれば、"伝言"という解釈以上は、辞書の語義としては難しということになろう。

"不得地玉作也"という語句を上手に使って、その場でのコミュニケーションの質を高めることができるということ。

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