→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.26] ■■■
[480]禮は古い倭言なのだろうか
片仮名レ≒乚(礼の終画…禮⇒礼の簡略化が早くから行われていた可能性が高そう。)で、平仮名れ=礼とされる。
「古事記」も、音素文字として同じである。"レ-"と発音する文字は幾つかあるが(例 列 連)、名称に使うには不適当な感じがするからか、もっぱら禮である。
≪禮[示+豊]/礼[示+乚]
 【語源】祭礼
  [呉音]ライ
  [漢音]レイ
  [訓]れ ひろ あ (なり のり ひろし あや)
呉音を使っていないが、訓として、はたして"れ"があったのか気になるところ。"ヒレ"(=領布/肩巾)のような呪物的な呼名は渡来ではないということか。それにしても、いかにも禮の文字に意味がありそうな用字だ。
そうそう、熊曾建が無礼であるとの表現もあり、これを訓読みでどう発音するのかはかなり悩ましいのでは。

---「古事記」"禮"用例---
燭一火 入見之時 "宇士多加斗呂呂岐弖"
深淵之水"夜"花神
至伯岐國之手間山本 云:
 「赤猪在此山 故"和
"共追下者 汝待取・・・
於是其妻須勢理毘賣命 以蛇"比"授其夫云其蛇將咋 以此"比"三擧打撥 故 如教者 蛇自靜 故 平寢出之 亦 來日夜者 入呉公與蜂室 且授呉公蜂之"比"
[__2]【八千矛神(大国主命)】婚高志國之沼河比賣幸行之時
    押そぶらひ 吾が立たせれば[和何多多勢婆] 引こづらひ
       吾が立たせれば[和何多多勢
婆]
    うれたくも[宇
多久母] 鳴くなる鳥か この鳥も
[__3]【沼河日売】未開戸(婚姻拒絶)
    八千矛の 神の命 萎草の 女にしあれば[賣邇志阿婆]
[__5]【大国主命】嫡后の嫉妬の抑制
    沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも 此れは相応はず[許婆布佐波受]
    群鳥の 吾が群往なば[和賀牟
伊那婆] 引け鳥の 吾が引け往なば
[__6]【須勢理毘賣命】~語契り再確認
    妻持たせらめ 吾はもよ 女にしあれば[賣邇斯阿婆] 汝招きて
不中天若日子 或有邪心者 天若日子 於此矢麻賀
[__8]【豊玉比売】獻歌 via 弟 玉依毘賣山幸彦への愛
    赤瓊は 緒さへ光れど[袁佐閇比迦杼] 白瓊の
[__9]【比古遲】答歌妃への愛
    我が率寝し 妹は忘れじ[伊毛波和須士] 世の事々に
次 若御毛沼命 亦名 豐御毛沼命 亦名 神倭伊波毘古命
"伊賀"所作仕奉於大殿内者 "意"先入
[_13]【久米人】@東遷我慢
    我は忘れじ[和波和須禮士]
[_15]【久米人】@東遷兵士空腹
    吾はや飢ぬ[和波夜惠奴]
[_16]【大久米命】地場婚姻推奨
    誰をし枕かむ[多袁志摩加牟]
然而阿坐之御子名 日子八井命 次神八井耳命 次神沼河耳命
[_22]伊須氣余理比賣】御子に危機を知らせる
    夕去れば[由布佐婆]
兄名蝿伊呂泥 亦名意富夜麻登久邇阿比賣命・・・又娶 意富夜麻登玖邇阿比賣命
之別
西方有熊曾建二人 是不伏无人等
意禮熊曾建二人 不伏無聞看 而 取殺意詔 而 遣
[_24]【倭建命】出雲健討伐自賛
    さ身無しに あはれ[佐味那志爾阿波]
[_28]【倭建命】初夜@所期の地
    枕かむとは 吾はすれど[阿波須禮杼] さ寝むとは 吾は思へど[阿波意母閇杼]
[_29]【美夜受比賣】答御歌
    新瑞の 年が来経れば[登斯賀岐布禮婆]新瑞の年が来経れば
[_31]【倭建命】伊吹山より敗走思國歌
    青垣山籠れる[阿袁加岐夜麻碁母流] 倭し麗し
其御子者"阿"坐
[_41]【建内宿禰】酒楽之歌崩御後実質天皇位の皇后を補佐し祭祀進行
    歌ひつつ醸みけれかも[迦美祁迦母] 舞ひつつ醸みけれかも[迦美祁加母]
丸邇之比布能意富美
[_42]【天皇】行幸で国の繁栄を寿ぐ
    千葉の 葛野を見れば[加豆怒袁美婆]
[_43]【天皇】矢河枝比売を迎えた大御饗酒宴での喜びの発露
    眉画き 濃に書き垂れ[許邇加岐多] 遇はしし 女 かもがと
[_50]【天皇】渡来名酒多飲酩酊時
    我酔ひにけり[和惠比邇祁理]
故其天之日矛持渡來物者 玉津寶云 而 珠二貫 又振浪"比" 切浪"比禮" 振風 "比" 切風"比" 又 奧津鏡 邊津鏡 并八種也
悉備設 爲"宇豆玖"云 爾・・・不償其宇豆玖之物・・・<此者神宇豆玖之言本者也>

「万葉集」では、"禮"は原則的には使わずに略字で表記することにしているようだ。例外はあるものの。・・・
[巻五#877]宇良夫禮遠留尓[うらぶれ居る] 
"礼"の用例は数多く、冒頭巻だけ見ると、音素文字としての用例しかなさそうだ。
[巻一] 還比奴礼婆[返らひぬれば] 屋杼礼里之[宿れりし] 花毛佐家礼抒[花も咲けれど] 阿礼座師[生れましし] 人尓和礼有哉[人に我れあれや] 見礼跡不飽可問[見れど飽かぬかも] 浮倍流礼[浮かべ流せれ] 安礼衝哉[生れ付くや] 安礼乃埼[安礼(あれ)の崎] 安良礼松原[安良礼(あられ)松原] 見礼常不飽香聞[見れど飽かぬかも] 天之四具礼能[天のしぐれの]

 (C) 2022 RandDManagement.com  →HOME