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■■■ 「古事記」解釈 [2022.6.23] ■■■
[538]叙事詩編纂者は小説表現を嫌う
<説>は小学校4年で修得すべき漢字とされるが、「萬葉集」の歌、「古事記」には用いられていない。📖安万侶版倭語表記用当用漢字集

≪説/說[言+兌]
  [呉音]エチ セ/セチ
  [漢音]エツ セイ/セツ
  [慣用音]ゼツ ゼイ
  [訓]と-く/とき さとし

但し、前者の注記や有名な歌の題詞には登場する。
  [巻二#90左注]右一首 歌古事記与類聚<歌林>所説不同歌主亦異焉・・・
  [巻五#802題詞]思子等歌一首[并序]
    釋迦如来金口正説 等思衆生如羅睺羅
    又説 愛無過子 至極大聖尚有愛子之心 況乎世間蒼生誰不愛子乎

  [巻五#802題詞]〳〵反歌

早くから覚えさせられるため、と-くという訓読みのイメージが定着しており、現代感覚では、人前で口に出して説諭する意味に思ってしまうが、全く違うと考えるべきかも。
<説>とは、もともとは筆記読字用語彙であり、口頭説明無しで、文書で説明することを示しているような気がしてくる。そう考えると、太安万侶が「古事記」で使用することはありえないことになるからだが。(「酉陽雑俎」読みで取り上げたことがあるが、唐代になってフィクション"読み物"≪小説≫に人気が出た。それは口誦する様な代物ではないし、理屈を"語っている"訳でもない。ここでの<説>は、文章上で個人的な考えを直接的に示すことを意味していそう。段成式は、出典を明記できる事実だけを示すことで、ものの見方を伝える手法で著したから、この本は小説ではないが、用語的には小説である。)
ただ、この文字は古い上、発音が異なる場合があるようで、えらくわかりにくい。意味する範囲もかなり広い。そこらは、実は、誰でもが知っている筈だ。
 子曰:學而時習之 不またよろこばし
    有朋自遠方來 不またたのし
    人不知而不慍 不亦君子乎

もちろん口に出して主張(告訴)するとの表現もあるし、誓言ということで使われていることもある。
太安万侶レベルのインテリであると、この辺りを知っていた可能性があろう。・・・
釋也 or 談說[「説文解字」@言]
桑之未落 其葉沃若 于嗟鳩兮 無食桑葚
于嗟女兮 無與士耽 士之耽兮 猶可說也
女之耽兮 不可說也[「詩經」國風 衛風 氓]
知 聞 說 親 名 實 合 為[「墨子」經上]
 …<知る>は以下の7つからなる。
  【聞】受け取る。…傳受之
  【說】隔たりを無くす。…方不㢓
  【親】自ら観る。…身觀焉
  【名】謂うだけの意味がある。…所以謂
  【實】謂うだけの内容がある。…所謂
  【合】両者が合わさる。…名實耦
  【為】志と行為が一致する。…志行
孟子曰:「博學而詳說之 將以反說約也」[「孟子」離婁下]
掌六祈以同鬼神示:
一曰類 二曰造 三曰禧 四曰禜 五曰攻 六曰說[「周禮」春官大祝]
  …祭祀名称

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