→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.1] ■■■ [608]「古事記」の文章作法はわかり易い それが変わったのは、西欧からの来訪者が日本語を言語学で分析し、文法書/辞典の作成に注力しているのを見せつけられたからだろう。 失礼ながら、もともと、そのような発想を欠いていた反省は皆無で、追い付け追い越せの気概で対応をしたとしか思えない。細かで網羅的という面では抜群ではあるものの、コンセプトを磨く方向では成果が上がっていない可能性もあろう。 それを考えると、「古事記」を読むなら、素人文法で眺めた方がよいかもしれない。 どうせ、わからない語彙を文法で解決できるものでもないのだから。 普通に眺めていれば、浅学故に既存古典文法にとらわれることがないから、「古事記」の言葉は4種類しかないことに気付くはずである。主語とか述語を示そうと努力している気配などほとんどなく、述部が読めれば、その関係している語彙から文脈で意味が想定できる構造になっているとしか思えない。漢文のレ点的読み方ができる箇所もあればほとんど通用しない部分もあり、漢文訓読み元祖ではあるものの、そのようなルールは無視しており、その点では無茶苦茶文法そのもの。 しかし、そんな筈はなかろうと思うなら、見方がおかしいと考えるのがフツーの姿勢。それで行こうというなら、通常の文法的解説は素人には無用の存在。 こんな風になろう。・・・ 倭文の核である語彙は述部の<詞>であり、生きている言葉なので、活用する。従って、構造的には固定部分の語幹と活用語尾から形成されることになる。 これを分類するなら、3種で十分。文字表記する場合は、活用語尾が自明なら、しいて記載しなくてもかまわない筈。 ❶<叙述詞> ①形態叙述詞 ②行為叙述詞 ③存在叙述詞 この詞は、発展性があり、上記2種に厳密に壁が設定されている訳ではなく、相互変換も可能で、それに対応した活用語尾が容易される。語尾部分は自立して意味がある訳ではないので、"詞"内に含まれている態変換の"辞"ということになる。 尚、動詞で云えば、自動詞と他動詞の区別もこうした"辞"で表現することになる。目的語の有無とは無関係。従って、それを一歩進めた受動態表現等もすべて接尾"辞"ですむように設計されている。 このような接尾"辞"は、1つのみとは限らず、重層化することもある。 まとめるとこうなろう。・・・ ❶<叙述詞> ①形態叙述詞(語幹+活用語尾辞) ②行為叙述詞(語幹+活用語尾辞) ③存在叙述詞(語幹+活用語尾辞) ⊕態変換接尾辞 ⊕重層接尾辞・・・助動詞等 表現の肝は接尾辞にあり、否定形や疑問形等々まで、すべてこの辞の設定で決まる。接尾辞の重層化だけでなく、叙述詞も重層化できるので、熟達すれば細やかな表現ができるが、単純表現だけでも意思疎通は十分可能である。 <叙述詞>という概念を設定してしまうと、主語とか目的語という概念は不要。その様な文構造的センスでは倭語の情感は伝わらないと思う。話語では、他者を語る時は自者から見てとか、想定するという形式にしないと気分悪しだからだ。 倭語で重要なのは、文章に於ける語彙の構造的位置付けではなく、語彙そのものの意義。伝えたい内容に具体性を与える詞が叙述詞の次に重要となる。いうまでもなく<名詞>ということ。細かな分類観はなさそうだが、大きくは4種に峻別されていそう。 ❷<名詞> ①固有名称詞 ②カテゴリー表記詞(敬称含む) ⊕前置装飾詞接尾辞・・・格助詞 ③話者観点代詞・・・代名詞 ④抽象的塊表現詞・・・数詞 ⊕叙述詞名詞化語尾辞 <叙述詞>発祥の地名譚が収録されており、かなり多くの固有名称がそのような出自である可能性を示唆していそう。 <固有名称詞>の重層化や<叙述詞>よる重層的修飾が好まれていそう。その場合は必ず前置修飾となるので誤認することはないだろう。 ただ複雑な状況では、それぞれの<名詞>がどのようにかかわるのかわからないので、後置辞が必要となる。文の構造を示すことが根幹となっている言語と比較するなら、この"辞"の存在が倭語文法の特徴ということになろう。 ❸<詞間関係提示後置辞>・・・テニヲハ等助詞 上記の2詞・1辞だけでは、文脈表現ができかねるので、語彙の塊がどのように配列しているか示すための"語"が必要となる。具体性のある意味を表現している訳ではないが、文脈上の繋がり上での意味を示す言葉となっている。 従って、話語としてなら、独立した言葉として使用できないこともない。 ❹<情緒醸成語> ①主に文頭語の接続語 ②主に文中語の副用語 ③主に文尾語の語気語(無音表現も可能) ④(文章表記用句間語) 以上、文法的見地から特別に検討してまとめてみたのではなく、原文を読もうとすれば、浅学者なので自ずとこうならざるを得ないというだけのこと。 【参考:漢文文法】 同訓異義の解説書ということで当時ベストセラーになったという、伊藤東涯[儒学者](+東所):「操觚字訣」1763年によれば、漢文は語法上、以下の文字からなるとされている。 ❶助辭(テニ(ヲ)ハ:助詞)…e.g. 而於乎哉 ❷語辭(文章の言葉字:副詞 介詞 連詞 感嘆詞)…e.g. 嗚呼如何梢亦 ❸虛字(働きになる字:動詞)…e.g. 命ズル 見ル 行ク うち、雜字(自動詞 形容詞) ❹實字(かたち在るモノ:名詞)…e.g. 天地日月命令 ・・・辞の解説からすると、西洋言語学に基づく構造文型に従った漢文読みを意識していないことがわかる。和文の見方で素直に検討すればそうならざるを得ないのでは。 [現代漢文]我在図書館看書 [現代語訳]私は図書館で本を読みます。 [安万侶流] (C) 2022 RandDManagement.com →HOME |