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■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.30] ■■■
[637][付録]<子音-母音>が事実上の音素
"golf"は言うまでもなく1音節/syllableだが、日本語は1文字1音節なのでゴルフだから3音節とされる。もっとも、英語話者には語尾はフ-ウと聴こえるので、4音節と感じる人もいるようだが。

英語も漢語も、母音語ではないから、母音と子音の組み合わせで発生する単位音の塊表音には神経質にならざるを得ない。間違えれば、ほとんどの場合単語が認識できなくなるからだ。
西洋文法に合わせる以上、仮名文字の<子音-母音>を<音節>と呼ぶことになるのはしかたないとは言え、日本語にこの概念はほとんど意味がなかろう。せいぜい100程度の、決まりきった<子音-母音>のことでしかなく、英語なら、音節の種類は10,000を越えてもおかしくないというに。
日本語には、<母音>と<子音-母音>しか音が無い("ん"いう例外はあるものの)のに、同様な取り扱いをして何を知りたいのかはなはだ疑問である。しかも<子音-母音>とは、頭の中に叩き込まれた幻想であり、日本語話者は独立<子音>の発音などしたことが無いから、<"子音-子音"-母音>も<子音-"母音-子音">もありえない音である。
音節とは、本来的には、独立<子音>の発音ができる話者が発声する<子音-母音-子音>の構造論であり、その様な理屈を日本語に適応させる意味があるとはとうてい思えない。
・・・そもそも、「古事記」の歌の記載ではっきり示されているように、音素(1文字1音)⇒単語⇒句(5or7音素)⇒歌という構造であって、[仮想子音]と[母音]の2音素から、単音の音節文字(1文字)が生まれたと示唆する表現は皆無である。

倭語〜日本語で、発声上の音の最小単位は、あくまでも[仮想子音-母音]あるいは[母音]であって、[仮想子音]自体も、音として確定している訳ではない。素人でも、た/ta・ち/chi・つ/tsuと発音していることに気付くのだから。音韻論からも、ハ(声門摩擦:h-a)・ヒ(硬口蓋摩擦:ç-i)・フ(両唇摩擦:ɸ-u)は同一子音ではない訳で、五十音に於ける<子音>とは、実際に独立して発音することができない、極めて抽象的な音と考えた方が当たっていそう。つまり、音の最小単位はハ・ヒ・フであるということ。

太安万侶はこのような<音節>概念についても、理解していたように思われる。子音を母音から分離する必要はなく、邪魔されない息の流れである母音につなげることで<音素>が生まれると考えていたのではあるまいか。
ともあれ、天竺の言語学を大いに参考にしているのは、先ず間違いなかろう。

単独文字の音は、子音のみではなく、母音(-a)を伴っている。(以下の表では-aを削除。子音のみの発音は、本来はヴィラーマという記号を付ける必要がある。)並び順に主要音を記載すれば、(ア/a) カー/ka チャ/ca/ta/na/pama |ヤ/ya/ra・la/vaである。
ただ、これは恣意的に似た様相を与えた書き方で、見ればわかるように、この後に、シャ/śa/sa/ḥaが存在している。

---輔(子)音---
無声無氣  無声帯氣  有声無氣  有声帯氣  鼻
     半母音  齒擦    (氣)
【軟口蓋/喉音】
क…k ख…kh ग…g घ…gh ङ…ṅ
   −  −  (ः…ḥ)
【硬口蓋[齶]音】
च…c च…ch ज…j झ…jh ञ…ñ
   य…y श…ś
【捲舌音】
ट…ṭ ठ…ṭ ड…ḍ ढ…ḍh ण…ṇ
   र…r ष…ṣ
【齒音】
त…t थ…th द…d ध…dh न…n
    ल…l स…s
【唇音】
प…p फ…ph ब…b भ…bh म…m
   व…v −
<追加分>
     ऩ…nh  म…mə  ऱ…ɻ
     ळ…ḷə  ऴ…ɻə
     ह…ha

「古事記」成立後、上記の音から、撥音と拗音が外来語用表記用として追加されたと見てよさそう。<子音-拗音>という表記になるので、拗音は事実上母音である。・・・

---8母音---
ア あ 阿 イ い 伊 ヰ ゐ 韋 ウ う 宇 𛀀 え 愛 ヱ ゑ 惠/恵 オ お 意 ヲ を 袁
---特別半母音---
ワ わ 和
---3半母音(拗音)---
ャ ゃ ュ ゅ ョ ょ
---撥音符号[アヌスヴァーラ]---
_ン ん

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