→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2023.4.3] ■■■ [649]抽象概念嫌いが如実 日本の大学の風土に根ざしている現象なのは間違いなく、もったいないと思っていたが、「古事記」を読んでいると、それは古代の倭国から連綿と維持されてきた精神風土でもあるという気になってきた。そこらに触れておきたい。 ・・・根本的には、「神」という抽象概念無しの信仰なので、概念形成の必要がなかったということだろう。「古事記」は、冒頭から、完璧な具象表現であり、語学的には比喩的記述ということになり、抽象化して概念を形成する必要性を全く感じていないことがわかる。<色彩>の概念さえ利用を避けてきたようで、具体的なモノの色や染料原材料で表現しないと、しみじみ感がでなかったようである。 その割に、閉鎖的な社会ではなく、海外との交流が活発だったようだから、かなりの頑固モン。 当然ながら、概念導入と同義である文字表記化を嫌うことになる。 そんな風に考えると、果たして、儒教は理解できたのだろうかと気にかかってくる。特に、<徳>と<五常(仁 義 礼 智 信)>のなかには、かなり高度な抽象性用語があり、倭語への翻訳は簡単ではなさそうだし。・・・11世紀末の書㊔「類聚名義抄」(章建てが仏教用語で整理方針がわからない。)でしか、これらの語彙がどう訓読されていたのか検討できないが、下記に示す様になにがなんだかわからない状況だったとも思えてくる。 序文の漢文では、儒教用語である<道徳>を"道軼軒后 コ跨周王"という記述にすることで、天武天皇讃としているし、元明天皇に対しても"コ被馬蹄之所極""コ冠天乙矣"として称賛している。しかし、本文で<徳>を使うことは無い。倭にそのような概念に似た用語はなかったことを示していると言ってよいのでは。 ≪コ/徳≫…序文のみ [訓]おしえ ㊔ノリ サイハイ メクム トル ヲクル アツシ ノホル アツカフ [「萬葉集」巻二#210] [呉音]トク [漢音]トク ≪仁≫…釀酒人名称のみ:"仁番/須須許理"(@百済の朝貢) 但し、序文の神名に使用。 [意味]亻(人)+二(相互関係) [訓]いつくしむ きみ く さと しのぶ じ と のり ひと ひとし ひろ ひろし まこと まさ まさし やす よし ㊔キミ ナムヂ ヒト ウツクシク メクム ムツマシ ヨシ ヨロコフ ユルス シノフ タフトシ 🈑[略音]二 [呉音]ニン 二 [漢音]ジン ≪義≫…"既殺己君 是不義" (歌中の音素文字使用例はない。) [意味]羊(神に供えた犠生)+我(鋸で分ける) [訓]よ-い よ-し(とする) よ-く ただ-しい ㊔n.a. 🈑[正音]ギ [呉音]ギ [漢音]ギ ≪禮/礼≫…禮字以音 ("れ"はこの文字。100弱の使用例あり。) [意味]示(祭祀行儀用台)+豊(形よく整えられた供物) [訓]ひろ れ あ (おじぎ) ㊔n.a. 🈑[略音]レ [呉音]ライ [漢音]レイ ≪智≫…智字以音 ("ち"は"知"が基本。"八尋白智鳥"の様に"千"を避けて使う。) [佛語]梵我一如の境地に到達する知恵 [訓]あきら さと さとい さとし さとる じ とし とみ とも のり ひと もと よも ㊔サトシ サトル サカシ トシ トモ 🈑[正音]チ [呉音]チ [漢音]チ ≪信/䛨≫…音素文字使用は無い。倭語翻訳文字。 [意味]亻(人)+㖖(刑罰) [訓]まこと まか-せる まか-す たよ-る たよ-り ㊔ツカヒ/フ (禾)サ ムヘナフ/リィ ミナ ツツシム ユク オモシ セム アカス (馬行)ミチ ウヤナウ キハム シルシ トシ アキテカ ササナ 🈑[略訓]シ [略訓]マ [呉音]シン [漢音]シン KEY:🈑「万葉用字格」 【参考】≪死≫ …音素文字使用は無い。 ㊔シヌ カル (禾)シ 🈑[正音]シ ⇒ 崩@天皇 皇后 皇太后 皇太后 薨@皇族 三位以上 卒@四・五位 寂@高僧 逝@敬意 殁 天子死曰崩 諸侯死曰薨 大夫死曰卒 士曰不禄 庶人曰死 [「礼記」曲記] -------儒教の概念------- 何謂人義? 父慈 子孝 兄良 弟弟 夫義 婦聽 長惠 幼順 君仁 臣忠 十者 謂之人義 [「禮記」#9禮運] 惻隱之心 仁之端也 羞惡之心 義之端也 辭讓之心 禮之端也 是非之心 智之端也 人之有是四端也 猶 其有四體也 [「孟子」公孫丑上] 惻隱之心 仁也 羞惡之心 義也 恭敬之心 禮也 是非之心 智也 "仁義禮智" 非由外鑠我也 我固有之也 弗思耳矣 [「孟子」告子上] "仁 誼 禮 知 信" 五常之道 [「漢書」卷五十六董仲舒傳] (C) 2023 RandDManagement.com →HOME |