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■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.1] ■■■
[706] 「古事記」仮名 混沌音 多陀知遅都豆弖代登斗杼度
たダちヂつヅてデとtoドdo太安万侶の凄さを確認しておこう。

「音素」とは呼ばないが、事実上それ以上細かな音で発音できない単位音で、それが拍表現も兼ねているのが倭語〜日本語の特徴である。つまり、音の数はせいぜいが80種程度しかない。どんな異なる言語の語彙が流入してきても、できる限りそれで済ませて来たことになる。
極めて特殊な文明であることを認識する必要があろう。ギリシア文明に端を発する現在のグローバル言語である英語は500〜600になる筈で、根本的な姿勢が異なっているのは自明である。<あ>という音は表記すればそれで定義できる世界とは訳が違い、<a>と記載しても、その音は様々あるのだから、そうならざるを得ない。おそらく、ハングル語も同じ様にならざるを得ない筈で、日本語と似ている言語と思っている人は多いようだが、印度系文明をママ取り入れた合理的表記方法の結果と言えないでもないが、基底がツングース系文化である以上、そうなるのは自然な流れと言えよう。
一方、中原文明を引き継いでいる現代中国語を、同じ基準で音を峻別したなら、軽く1000を越え2000に近づいておかしくなかろう。文字毎に異なる音を要求される以上致し方ない。

そんな状況であるにもかかわらず、話語であり、音がはたして幾つあるのかも定かでない状況にもかかわらず、倭語の漢字表記化を行ったのである。
常識的に考えれば、倭語の漢字表記化自体はおそらく珍しいものではなかったろう。しかし、それは俗人的な直感で文字を選択して書き記したいい加減な代物。なかには、文字表記語彙としてすでに定着していたものもあったろうが、全体では一部にすぎず、そこに表記化の方法論が存在している訳でもなく、要するに滅茶苦茶で混沌の極みだったに違いない。
従って、文章として記載するには漢文以外に手は無いと考えるしかない状態と見なされていたと思われる。半島のように、支配階層は、書類はすべて漢文、読みも会話も漢語、という環境下で日々生活することにならざるをえなくなる訳で、漢語がわからない被支配階層との会話語が別途存在することにならざるを得ない。
その結果、11世紀までの半島独自文化は全く残存せず状態に陥った訳で、日本国はその道を避けるために苦労したことになろう。
何回か触れて来たが、日本最大の内乱かも知れぬ"壬申の乱"はその路線対立(インターナショナル派と中華帝国圏内化派)の結果と見ることもできよう。

(夕:多の終画)(太) [萬]…多
多 田 手 当 咫 誰 廂 他 耕 粮
  [+萬]太大令痛丹而板

ダ [萬]…陀 @呉音
陀 太 (田 多)
  [+萬]手堕陁駄(大)

(千の変形)(知) [萬]…知 @呉漢音
知 千 仟 血 智 内 道 市 乳 鉤 地
  [+萬]市茅遅陳治稚路

ヂ [萬]…遅 @呉音
遅 治 (知 智 道 鉤 地)
  [+萬]路茅径持歳尼耻

(州の初画)(n.a.) [萬]…都 @呉音
都 津 箇 疋 豆
  [+萬]追通茅頭内川

ヅ [萬]…豆 @呉音
(豆 津) 遣
  [+萬]蝦出徒集(都頭)

(天の初画)(〃) [萬]…弖
弖 手 帝 而 以
  [+萬]{イ弖}氐天提底義代太価棄戸直泥

デ [萬]…代
代 伝 出 殿 (弖 手)
  [+萬]袖田而袂埿({イ弖}底氐天堤泥)

(⺊:止の初画)(〃) [萬]…登【乙】
登 与 十 等 鳥 弟
  [+萬]跡常与得并迹人騰共及止豊音声且鷹飛冬澄杼

to [萬]…斗【甲】 @漢音
斗 戸 刀 門 利 都 砥 土 徒 外
  [+萬]堵鄙度礪間扉鋒

ド [萬]…杼【乙】
杼 縢 騰
  [+萬]雖藤止特(跡等登常十迹)

do [萬]…度【甲】
度 (斗 戸 門)
  [+萬]前外土渡速利神

【追記】誰でもが間違いなく片仮名筆記できるし、初等的英単語なので、以下の表記現象は知っている筈だが、指摘されると、そんなことついぞ知らなかったという顔をする上、この問題をそれ以上云々しないことにする姿勢こそ、雑炊言語社会の特徴と言えよう。決して混乱している訳ではなく、それぞれの表記の伝統を引きずっているに過ぎまい。
  tea・・・ 【tiː】ティー
  team・・・【tiːm】チーム
  steal・・・【stiːl】スティール
       【stiːl】steel・・・スチール

タ行の音の混淆(ぢ=じ づ=ず)にしても、「古事記」成立時には無かったとされているが、そんなことが発生する風土は、「古事記」成立時点ですでに形成されていたと考えた方が自然だと思う。

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