→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.5] ■■■ [709] 音節概念には無理があり過ぎ にもかかわらず、単位音の概念を印欧語に合わせて考えることになっており、素人からするとトンデモ理論である。なかでも音節概念の説明は何が何やらの無理筋に映る。例えば、"strength"は1音節で、"ストレングス"は6音節であるが、そのような見方にどの様な意味があるのかまるっきりわからない。片や子音言語で、日本語が母音言語なのだから、同じ切り口で見る訳にはいくまい。日本語では、この定義からすれば音節が最小発音単位になってしまう。(印欧語の音素とされる子音は、日本語を母語とする人にとっては、相当な訓練無しには独立して発音できない。訓練してもできない人も少なくない。これでは専門家が作った分析のための理屈と言わざるを得まい。) 太安万侶は、そのことに気付いていたようで、現代人とは違って頭の切れが全く違う。 本当は、一寸眺めるだけで、誰にでもわかることなのだが。・・・ 【サンスクリット語】・・・装飾音列語(叙事語) <🆅+≪🅒ṃ/ḥ or −≫> <≪🅒 x n≫+🆅+≪🅒ṃ/ḥ or −≫> 【漢語】・・・一文字表音語(漢字羅列語) <🅒+🆅+🆅+🅒> 犬 [*kʰʷeːnʔ]…クヱン@呉音 名 [*meŋ]…ミヤウ@呉音 木 [*moːɡ]…モク@呉音 【英語】・・・分節子音語(文章語) <≪🅒 x m≫+🆅+≪🅒 x n≫> (母音示唆文字) a e i o u y (冠詞) a[ə] ゴー ①go[ɡoʊ] ネーム ①name[neɪm] ドッグ ①dog[dɔɡ] ロック ①rock[ɹɑk] ウエーブ ①wave[weɪv] ストリクト ①strict[stɹɪkt] ストレングス ①strength[stɹɛŋkθ] アロー ②ar-row エネミイ ③en-e-my ミリタリー ④mi-li-ta-ry 上記でも綴り文字の語尾"e"は無発音だったりして、母音の存在が自明ではない。明らかに子音の並びから分節し、その核たる母音の発音を丸暗記させられている言語である。(e.g. city[ɪ][i] computer[uː] ceiling[iː] cool[uː] curse[ɜː] cake[eɪ] cat[æ] calm[ɑː] cut[ʌ] cedar[ə] cock[ɑ] call[ɔː]) 当たり前と言えば当たり前だが、母国語の人々用の表記である。 一方、片仮名表記は、実際の発音には揺らぎはあるものの、核母音を同定する分節作業はいらず、どの様な綴りであろうと、確実に読み取って発音可能である。表記についての根本的な姿勢が異なることがわかる。 【倭語】・・・一拍母音語(相対話語) <🆅> <🅒+🆅> 【母音表音文字】 ①あ い う え お/を 名 ①な/na 矢 ①や/ya 木 ①き/ki 石[伊波] ①い①は/i-ha 行く ①い①く/i-ku 犬 ①い①ぬ/i-nu 「古事記」では、他の言語では当たり前の様に登場してくる、二重母音・連続短母音・長母音が存在していないかに映る。しかし、雑炊言語を旨とする、母音言語なら当然の姿勢とは言えまいか。聴き手が差異を認識しずらい音は排除ということで。これらの概念は頭で考えただけのもので、現時点では、物理的波動記録(ソノグラム)で明確に峻別できない以上、子音中心の語彙の情緒に引きずられてそう聞こえている可能性も否定できないからだ。 もう一つ重要なのは、独立子音は存在しないし、子音が連続したり母音の後ろに付くこともなく、事実上母音の前置修飾音である。そのため、連続母音を避ける以上、単独母音は語彙の頭でしか用いることができない。 倭語には、音素・音節という西欧語の概念は似つかわしくないことがわかる。子音は、発声の独立最小単位とされていないのであるから、他言語を模倣した仮想の単位音と見なすしかないからだ。(前置子音と母音が合体しているに過ぎない。)一方で、母音は音素文字である。ところが、日本語の最小の音とは、五十音たる<🆅>と<🅒🆅>ということで、それは音素ではなく、普通は音節文字とされる。・・・極めて通俗的な定義がなされていることがわかる。(ストレングスは6音節だが、当の英語は1音節であるとの見方をすることに意味があるとは思えない。) (C) 2023 RandDManagement.com →HOME |