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■■■ 「古事記」解釈 [2023.9.19] ■■■
[810] 太安万侶:「漢倭辞典」言語分類
小生は、「古事記」の地文を"変体"漢文と見なすのは、間違っており、これを解決しない限り、読むことはできない、と考えている。
この見方は、倭語〜日本語とは膠着語であり、文の語順はSОVであるとの現行分類(そのうちこの手の見方は変わるだろう。)を金科玉条の如く続ける姿勢から来ていそうなので、ここらに触れておくことにした。

説明の肝は簡単明瞭。・・・
倭語〜日本語は、古代屈折語表記文と類似の性情を有しており、両者に直接的な関係性が存在するとはとうてい思えない以上、ユーラシア大陸に於ける言語表現方法自体はどの言語でもそれほど大きな違いがある訳ではないことを示唆している。

その言語とはヒッタイト語@アナトリア
印欧語出土テキスト(呪術的内容)の中で最も古い(前16世紀)とされている。プロフィールは以下の通り。・・・
【推定使用音素】
 4母音(さらに長母音化あり。)
   …文字上では"О"を欠くが、発音されていたと推定されている。
 1ダースほどの基本子音(有性無声対応と重子音化でさらに数がふえる。)
【文字】3系統混在 400種程度
 4タイプ(V CV VC CVC)表音文字(アッカド語楔形文字借用約160種)
 シュメール/アッカド語単語表意文字(発音不明)
 置き字的名詞用符号
【活用】
 名詞/形容詞には性(2)・数(2)・格(8)
   …語幹の音に合わせた5タイプ。
 動詞は人称(3)・数(2)・態(2)・時制(2)・法(2)
   …2タイプ。
【語順】
 SОV…叙述部文末型(後置助動詞型)だが強調文では変る。
 文頭接続語多用
 主語の前に多数語彙での修飾可能

早い話、ポイントは名詞語と動詞語の違い。
そのスキームは以下の様に思えて来る。・・・
┼┼┼┼
┼┼┌─┴─┐⇐語彙構成
┼┼分化┼┼統合
┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼アイヌ
┼┼
┌┴───────────┐⇐語彙位置付け(変態)
活用┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼無変化
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┌┴──────┐⇐最重要語彙
主名詞┼┼┼┼主動詞┼┼┼主名詞
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┌┴┐⇐主名詞位置
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
└─┐┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┌─┴─┐⇐従動詞位置
配列連続┼┼┼┼┼┼┼┼連続
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼
┌┴┐⇐仮<格>名詞(文章構造最優先)
┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼
西┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┌─┴─┐⇐主動詞位置
┼┼┼┼┼┼最後尾
┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┌┴┐⇐主題提示性(非構造文章)
┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼
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これからすると、欧・漢・倭は方向性が異なるが、欧のなかでは英が、より解り易くシンプルな文構造を志向していると言えそう。倭はそれ以上な訳で、単純化路線の最先頭に思えてくる。その観点では、漢は活用が無いからとんでもなく単純だが、その代わりに表現スパンが狭くなってしまうのは避けがたい。表記以外の、伝達に必要な語彙的知識が膨大に膨れ上がることになりかねない訳で、簡単言語路線では無い。従って、<漢諸語>は存続しがたく、帝国語としての<漢語>一本化に向かいそうに映るが、現実には<無変化>言語グループができあがっている。これは、超膨大な経典を土台とする国家としては最良な言語だからかも。

【コメント】そもそも<変体漢文>なる呼名は、どう変態させたか、規則を示せていない以上、その意味は事実上<出鱈目漢文>。当然、読み方確定はできない。この先もこの状態が続くに違いない。
ただ、そのうち、突然、結着が付く可能性はある。希望的観測ということではなく、インターナショナル化が進むなら、必然と言えそうだから。上記のヒッタイト語の文字表記状況を見れば、それに頷く人も少なくなかろう。
極めて普遍的なものの考え方に基づいて、「古事記」倭文表記が成立していそうだから、従来の眼鏡を外す研究者が生まれておかしくなく、革新的見方が提起されれば、状況が一変しておかしくない。


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