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■■■ 「古事記」解釈 [2023.9.20] ■■■
[811] 太安万侶:「漢倭辞典」倭語漢字文(上)
小生が「古事記」をとても漢文と思えない理由は、受けた漢文教育のせいもある。毎回宿題があり、漢文副読本からの原稿用紙転写を、書き直し皆無のペン書きで提出させられたからだ。("単なる文字列"転写はことの他難作業。)
この不快感を覚えていると、「古事記」は漢文と違って、極めてよく書けていると感じてしまう。読むのに、漢文訓読記号など不要と云うより邪魔になりそうで、コリャ凄いとなる。(「古事記」によって漢文訓読方法が生み出されたのだろうと、想像することにもなる。)

何故に読み易いかと言えば、長々と続く文字列であっても、ほとんど苦労することなく、文章がどの様になっているかわかるから。漢文は、読み点(。)で新文章の頭を示してもらうと同時に、返り点(レ)で動詞が指定されないと、暗記嫌いにとっては、文字が無意味に並んでいるだけに映るので、とても読む気になれない。

どんな具合か、例でお示ししよう。

ダラダラした文字列が、自動的とも言えるほど即座に構造的な形式に直せる。この作業が当時の読者の頭のなかで行えるような体裁になっていると言ってよいだろう。
対象読者層を考えると、この見方には、特別な技量を必要としないし、前もって必要な知識もほとんどない。注記的補助はあったりするとかえって邪魔な位では。
そんな文章を漢文と感じるべきらしいが、無理である。・・・

爾高御產巢日~天照大御~之命以於天安河之河原~集八百萬~集而思金~令思而詔此葦原中國者我御子之所知國言依所賜之國也故以爲於此國道速振荒振國~等之多在是使何~而將言趣爾思金~及八百萬~議白之天菩比~是可遣故遣天菩比~者乃媚附大國主~至于三年不復奏是以高御產巢日~天照大御~亦問諸~等所遣葦原中國之天菩比~久不復奏亦使何~之吉爾・・・
  🢃
爾 【名称①】【名称②】之命以
   於{〜} [~集]八百萬[~集]   而
  【名称③】[令思]      而
  詔:
     「此≪〜國≫者
       我御子之[所知]國 [言依][所賜]之國 也
      故 以爲 於{此國道}
       [速振][荒振]【國~等】之[多在]
      是使何~   而
      將[言趣]」

爾 【名称③】及【八百萬~】議白之:
     「【名称④】 是可遣」
故 遣【名称④】者
乃 [媚附]【名称⑤】 至于{〜}不[復奏]
是以 【名称①】亦問【諸~等】:
     「所遣≪〜國≫之【名称④】久不[復奏]
      亦 使何~之吉」

爾・・・

爾天照大御~高木~(①)之命以詔太子正勝吾勝勝速日天忍穗耳命今平訖葦原中國之白故隨言依賜降坐而知者爾其太子正勝吾勝勝速日天忍穗耳命答白僕者將降裝束之間子生出名天邇岐志國邇岐志<自邇至志以音>天津日高日子番能邇邇藝命此子應降也此御子者御合高木~(①)之女萬幡豐秋津師比賣命生子天火明命次日子番能邇邇藝命<二柱>也是以隨白之科詔日子番能邇邇藝命此豐葦原水穗國者汝將知國言依賜故隨命以可天降爾・・・
  🢃
爾 【名称②】【名称(①)】之命以 詔【名称❶】:
     「今 平訖≪〜國≫ 之白:
       "故 隨[言依]賜"
      [降坐]      而
      知者」

爾 其太子【名称❶】答白:
     「僕者 將 降[裝束]之間
      子生出 名【名称❷】
      此子應降 也」

  此御子者 御合【名称(①)】之女【名称
   生子【名称】次【名称】 也
是以 隨白之科詔:
     「此≪〜國≫者 汝將知國[言依]賜
      故 隨命 以可天降」

爾・・・

例えば、上記用例で、専門家から説明してもらわなくても、以下の部分を漢文(SV)と考えなどしないだろう。どうして目的語が動詞の前にあるのか迷うことなどなく、素直に倭文の流れ(ОV)で読むだけ。
  [思金~]令思
 名【天"邇岐志國邇岐志"天津日高日子番能邇邇藝命】 [此子]應降
倭語は動詞語であり、たとえ名詞が動詞の後ろに記載されていても(VО)、文章がどこからどこまでかわかっていれば、漢文訓読(レ)気分になることは考えにくい。漢字の順番を気にせず当たり前の倭語の調子で読むことになろう。
倭語は主題提示型であり、動詞修飾的句が動詞の前に付くだけで、名詞を規則的に並べる必要がある構造文ではないから、動詞が確定さえすればこうした読み方はなんらの難しさも発生しない。漢語や欧語の話者とは違うのである。
<【S】詔【О】:>という文型も漢文そのものに映るが、模す必然性は薄い。記載上で重要なのは、この文型以前で、引用部の確定。<詔:「・・・」>の見える化なのだから、詔の目的語は誤解を生みにくい位置に置くのが一番。

ここらは、もう少し検討を続けることにしよう。

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