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■■■ 「古事記」解釈 [2023.9.22] ■■■
[813] 太安万侶:「漢倭辞典」副詞圧巻🇯🇵
[ご注意]"副詞圧巻"は素人論なのでそのおつもりで。
倭語の特徴はいかにも雑種言語らしさが溢れているというのが、小生の見立て。

発声音は音節(シラブル)という世界標準の単位でみると、2桁の1拍音しかない。一番簡単な表音方法を採用していると言ってよいだろう。しかも動詞語なので、名詞は無変化だし、動詞の主語名詞対応の語形変化は発生しない。その代わり、動詞は活用するし、その語尾に文の意味を表示する語彙がつくが、両者ともの複雑ではなく規則性があってわかり易い。
ここらはいかにも"話語です。"的な性情で、漢語の語彙変化せずとは好対照。動詞部で文が成立しているので、意味付けした名詞句をいくつでも、ほぼ自由に付けることで文章が成立してしまう。しかも、名詞語尾に助詞をつけるだけという、実に簡便な方法が採用されている。話語ならではのスタイルであり、文全体としての主題が想定できるような句があれば十分という極めて柔軟な仕様。
名詞語はとてもではないが、そうはいかない。先ず、主名詞を設定し、語順を厳格に取り決めるておかないと、なにがなにやらになってしまうからだ。

しかし、単純そうに見えても、実は何が何やら部分が存在しているので、そこらを取り上げておこうと思う。

一般文法を避け、書いて来たことをママ整理した語彙分類図を提示しておこう。・・・

┌文内構成語
│┌文要素語
│││┌【叙述部】
│││││┌主述語【活用語】
│││││││┌動詞
│││││││├第二動詞
││││││├┤(形容詞・形容動詞)
│││││││└名詞語尾連結補助動詞
││││││┼┼(助動詞の一部)
││││││└─動詞語尾連結動詞
││││└┤┼┼┼┼(助動詞)
││││┼┼└───付属詳細化詞(副詞・連副詞)
││├┤
│││└【名詞句】
││┼┼│┌┬──名詞(含:代名詞)
││┼┼││└──特定詞(こそあど)
││┼┼││┌──名詞修飾詞
││┼┼│├┤┼┼┼(連体詞・副詞や助詞の一部)
││┼┼││└──"転化"修飾語
││┼┼└┤┼┼┼┼(活用語連体形)
││┼┼┼└───活用語対応語尾付属詞(助詞)
││
││└───────文付加語(副詞の一部)
└┤
┼┼└(表記用置字語等[句末詞])…定義としては間投助詞も

└文外独立語
┼┼├──────────単独詞(感動詞・副詞の一部)
┼┼└┬─────────接続詞
┼┼┼└─────────段落詞(接続詞の一部)

・・・こう眺めると、<副詞>が、簡素で規則的な文法を作ろうとする流れの桎梏となっていることがわかる。(現行文法の視点で眺めれば、他の品詞の特徴を突っ込んで、"基本規則無視"。)これは、上記の様な整理の仕方をしたため生じたのではなく、副詞自体の概念が分裂的であるせい。

現代国語では、"主として"連用(動詞・形容詞・形容動詞)修飾語として習うから、多少の例外ありで通り過ぎたいところだが、現実の用法として、名詞類修飾は少なくないし、連副詞も大いに使っているから、それは無理。
 もっと歩け(動詞)  もっと大きい(形容詞)  もっと緊密だ(形容動詞)
 もっと上(名詞)  もっとゆっくり(副詞)

と言っても、これ位ならどうということもないが、独立というか、文全体の修飾機能と呼ばざるを得ない場合もある。素人的にはそれは接続詞ではないかと思うものまで<副詞>と認定されていたりして、文法規定からかなり逸脱してしまうことになる。
それでも、すべて単純修飾なら、"多少雑多"でおさめたいところだが、そうは問屋が卸さない。文章上離れた位置にありながら、後ろの方に対応する助動詞を配置する、矢鱈に厳格な"係り"規則が存在する用例群があり、重要な役割を果たしているのだから。

"活用しない自立語。しかし、主語にはならない。"とスッキリした定義にもかかわらず、その内実は"the others"的なゴチャ概念。整理すると、細かくなってどうにもならぬから、この程度にしておこうとの手抜き印象は否めない。
このことは何を意味するのか考えてみた。・・・

「主語-述語」の構造文文法を確定的にした上で、その洗練を進める路線からすれば、重要度はとてつもなく低くなる品詞ということは言えそう。
この見方を、逆に解釈すれば、文字表記化を嫌ってきた人々にとっては、<副詞>こそ一番心に沁みる語彙ということになりそう。
その感覚は現代にも受け継がれているのかも知れないという気にもさせられる。<副詞>は自立語であるにもかかわらず平仮名表記が好まれているからだ。漢語表現は極めて難しい語彙であるとの意思表示以外のなにものでもなかろう。
副詞こそが、日本語らしさを表現する語彙と考えるべきかも。

【「古事記」所収語の副詞らしき例】
   (全体を見ましたが網羅的ではありません。)
≪-に≫…格助詞"に”、あるいは接尾辞"似"の名詞句ともとれる。
 "阿那邇"あやに
 "阿夜爾"あやに
 "母由良邇"もゆらに
 "宇麻良爾"うまらに(美味)
 "多陀邇"ただに
 "志多々爾"したたに
 "登許余爾"とこよに(常世)
 最後之いやはてに
 如何いかに
 つひに
 さはに
 すでに
 つねに
 まさに
 わづかに
 まさに
 たしかに
 儵忽たちまちに
 まことに
 すみやかに
 にわかに
 つぶさに
 ひとへに
≪重畳≫
 "許々袁々呂々邇"こをろこをろに
 "佐和佐和邇"さわさわに(騒々)
 "那摩那摩邇"なまなまに
 "加都賀都"かつがつ(且)
 "宇倍那宇倍那宇倍那"うべなうべなうべな
 "酒久酒久登"すくすくと
 盡 ことごとく
 各 おの(おの)
 逾/愈いよいよ
 殆 ほとほと
 甚 はなはだ
 次第つぎつぎ
≪数量詞表現≫…用法解説が今一歩なので割愛。
≪-i≫…形容詞連用形終止形的
 ほとんど見つからなかった。
  すこし
  "許紀志"こきし
≪-て≫…動詞連用形的
 轉/転かへりて
 はじめて
 すべて
 かへりて
≪1拍音≫
 "登"
 "那"
 
 "夜"(弥)
≪2拍音≫
 "伊夜"いや
 "那杼"など(何故)
 "佐夜"さや
 "由米"ゆめ(謹)
 "伊多"いた(甚)
 なべ
 なほ
 みづ
 ただ
 みな
 やや
 まづ
 それ
 やく
 うべ
 ひた
≪他≫
 狹蠅"那須"さばへなす
 "多斯美"たしみ
 なかれ
 專/専もはら
 さきく
 ・・・〜
 さね[不]

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