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■■■ 「古事記」解釈 [2024.4.27] ■■■
[871]読み方[41]
「水鏡」は仏道に帰依し、「大鏡」 「増鏡」 をすでに読んでいる人を対象とした本。一人で声をだして読むこともあるが、多くの場合、それを同時に他の人に聴かせるタイプ。現代では読書は基本黙読なのでわかりにくいが、参加者にとっては、貴重なエンタテインメントでもあったと考えるべきと思う。漢文の国史は、社会生活上必要なので読む訳で、そこらの峻別は大切。
「古事記」は口誦叙事なので多少性情が違うものの、この観点では同類と云っても間違いではなかろう。

こうした語りには、必ず、出だしがある。(いわば、ニュースを伝える場合に最初に情報の出所を必要とするようなもので。)
「水鏡」では、仙人の語りを聴いた修行者の話を老尼が記述したとのストーリーになっている。どうでもよさそうに思いがちだが、これがあるからこそエンタテインメント性が発揮でき、人々の頭のなかに残るのである。・・・
   神代よりこの葛城吉野山などをすみかとして
   時々はかたちを隱して
   都のありさまも諸國に至るまで
   見聞きて過ぎ侍りき。

当然ながら仙界は葛城吉野山に存在することに。これは神道系コンセプトではなく、中国土着道教を取り込んだ役行者系仏教。国家鎮護の聖徳太子系ではない。(「今昔物語集」によれば、この他に行基系仏教がある。)

・・・「古事記」の序文も似た役割を果たしている筈だが、情報ソースの書名を2つ記載しただけなので、味もそっけもない。これでは頭に残る作品にはなれそうにない。そのため、ガイスト・天武天皇・元明天皇についての漢詩風作品があると考えることもできよう。
書誌的事項だけで十分なのに、余計と思われる作文を敢えて添付しているのはそこらの配慮だと思う。

そう思って序文を眺めると、<吉野>の扱いが目に付く。・・・
 天武天皇
   [天時未臻 蟬蛻 於 南山]
    🈠(漢文)序文㊁御大八洲天皇御世
 ~倭天皇
   [大烏導 於 吉野]
    🈠(漢文)序文㊀混元〜飛鳥

成程、天皇として圧倒的な存在感を醸し出しているのは、初代・16代・21代ということになろう。中華帝国的諡号として、それぞれ、(アマのヤマトの)高祖・太宗・世祖(武帝)としたくなるような扱い。(天武天皇-玄宗)・・・
 ~倭伊波禮毘古命
   [到吉野河河尻時]
    ㊥❶㊄贄持之子・井氷鹿・石押分之子
 大雀命
   [吉野之國主等瞻大雀命所佩御刀]
    ㊥⓯品陀和氣命⓸髮長比賣
 大長谷若建命
   [天皇幸行吉野宮之時 吉野川之濱有童女]
    ㊦㉑㊃幸行吉野宮

中下巻の語り物としては、この3天皇段が白眉ということになろう。


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