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■■■ 「古事記」解釈 [2022.10.10] ■■■
[歌鑑賞8]赤瓊は緒さへ光れど
【豊玉比売】獻歌 via 弟 玉依毘賣山幸彦への愛
阿加陀麻波あかだまは 袁佐閇比迦禮杼をさへひかれど 斯良多麻能しらたまの 岐美何余曾比斯きみがよそひし 多布斗久阿理祁理たふとくありけり
㊄(5-7)-(5-7)-8

    雖恨 其伺情
    不忍 因治養
    附 其弟 玉依毘賣 而
    獻歌之
    其歌曰

地文として、下注の一文も。
       此歌者夷振也
赤瓊は  赤玉は
緒さへ光れど  緒でさえ光りますが
白瓊の  白玉の(様な)
君が装ひし  君の装いは
尊く有りけり  尊いことです

実直なだけで、雅感を欠く表現であり、感興を呼ぶ手の歌ではないものの、倭人確立を意味する民族創成譚の核を担っていると考えることもできる。
鰐母の部族譚からの脱皮を図ることに決したことに対する、寿ぎの歌と見なすことができるからだ。
   竊伺其方產者 化八尋和邇 而 匍匐委蛇
    ⇓
   卽 塞海坂 而 返入
地文からすれば、南海(スンダ系文化)との交流を閉じることになる。

南の島嶼地域の風習として、女巫(ノロ)の祭祀を上げることができるが、その最重要装身具として首に懸ける連珠を上げることができよう。その紐が<緒>である。
ここの珠は例外なく貝産真珠であり、当該地域での漢語通称分類用語としては白(小粒)と青(大粒)になる。両者を大量に中華帝国に貢いで来た地域と見てよいだろう。(倭語の青もblueの意味はなく、現代色彩名では灰色に近い。)
古代、珊瑚製の紅色の玉が珍重された記録はなさそうだから、ここでの赤玉とは、紐に通した明るく輝く様な真珠をさすのではなかろうか。(倭語の赤は"明るい"を意味し、黒の"暗い"の反意語である。)
一方、八嶋地域での白玉とは、真珠を意味していないから、軟玉系翡翠ということになるのかも。

そうだとすれば、歌の真意はわかる。
最高級真珠を着けると輝きでその緒まで光る印象を与えるが、そこまでいかないおだやかで奥深い色彩の翡翠で飾っていても、そのお姿は尊いということになろう。

単純な比較でしかない歌だが、勾玉文化がここで分化することを示唆している。
ノロが身に着けるのは、多数の球体に近い真珠の連鎖に見えるものの、そのなかに大きな異形の曲がり玉の真珠が必ず含まれているからだ。これが、倭では翡翠を磨いて猪の牙型に作成した曲がり玉に相当する。(もちろん、赤瓊と白瓊は、色彩の違いと見なすこともできない訳ではなく、その場合は両者ともに水晶製と考えるしかないが、可能性は低かろう。朽ちない素材なので遺跡から出土してもよさそうだが、その様な例がある訳でもないからだ。)

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