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■■■ 「古事記」解釈 [2022.11.13] ■■■
[歌鑑賞41]この神酒を醸みけむ人は
【建内宿禰】酒楽之歌崩御後実質天皇位の皇后を補佐し祭祀進行
許能美岐袁このみきを 迦美祁牟比登波かみけむひとは 曾能都豆美そのつづみ 宇須邇多弖弖うすにたてて 宇多比都都うたひつつ 迦美祁禮迦母かみけれかも 麻比都都まひつつ 迦美祁禮加母かみけれかも 許能美岐能このみきの 美岐能みきの 阿夜邇あやに 宇多陀怒斯うただのし 佐佐ささ
⑬(5-7)-(5-6)-(5-6)-(4-6)-5-3-3-5-2

    ・・・如此歌 而
    獻大御酒
    爾 建内宿禰命 爲御子答 歌曰

歌の後に解説1行。
    此者 酒樂之歌也
この神酒を  この御酒を
醸みけむ人は  釀造なさった人は
その鼓  その太鼓を
臼に立てて  臼の(横に)立てて
歌ひつつ  歌いながら
醸みけれかも  醸造したからなのか
舞ひつつ  舞いながら
醸みけれかも  醸造したからなのか
この御酒の  この御酒は
御酒の  御酒は
あやに  妙なるもので なんとも言えず
歌愉し  (実に)歌うに愉しいもの
ささ(囃子)  さ〜 さ〜

神酒を勧められたのは皇子であるにもかかわらず、御付きの臣下が代理で返歌。皇子が幼過ぎる訳でもなかろうし、その理由はよくわからないが、神憑りする巫女的な皇后と神との交信役たる神官の臣の掛け合いが、一番スムースに進むのは確かなようだ。

この建内宿禰命の返歌は、常識的なもの。
醸造が成功するかどうかはその時点の環境で左右されるから、労働歌とは違うが、醸造の神を喜ばせるための歌舞が行われるのは当然だろう。(その醸造神を少名御神と見なせるかについては、なんとも言い難し。)

この歌が、<酒樂之歌>とされているところを見ると、この事績で朝廷の酒宴に於ける定番歌が定まったことになろう。
ただ、長年に渡って能力を磨き上げてきた、経験豊富な官僚であるから、この時に創作したのではなく、歌われていたなかから選んだだけという可能性の方が高かろう。

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