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■■■ 「古事記」解釈 [2022.12.7] ■■■
[歌鑑賞65]八田の一本菅は子持たず
【天皇】妃への愛一途
夜多能やたの 比登母登須宜波ひともとすげは 古母多受こもたず 多知迦阿禮那牟たちかあれなむ 阿多良須賀波良あたらすかはら 許登袁許曾ことをこそ 須宜波良登伊波米すげはらといはめ 阿多良須賀志賣あたらすかしめ
㊇ or ㊄+㊂(3-7)-(4-7)-7-(5-8)-7

    天皇戀八田若郎女
    賜遣御歌 其歌曰

八田の  八田の
一本菅は  一本の菅[スゲ]は
子持たず  子を持たずにいて
立ちか荒れなむ  立ち枯れて(朽ちて)しまうだろうが
あたら菅原  惜しい菅[スガ]原だ
言をこそ  (いや) この言葉こそは
菅原と言はめ  (正しくは) 菅[スゲ]原と言うべきだが (汝のことを言いたくて 使ってしまった)
あたら清し女  (本当に)惜しい 清らかな女だからだ

八田若郎女の出自の地は不詳。矢田とは記載されていないが、御名代に関係しているようなので、その名称であるかも。ただ、左京・山城・大和・摂津・河内とあり、絞るのは困難。
言うまでもなく、一本とは、皇后の力で宮を放逐されて独居させられていることを指す。スゲとはスガの転訛だから、多少理屈っぽさを感じさせるものの、景観に自らの心情を詠みこんでいて、いかにも歌らしい歌といえよう。
「萬葉集」では、<菅の根>は枕詞になっている位、菅はこの当時よく詠まれていたようだし、その中味はほとんどが愛情関係だから、センス抜群と感じさせる歌かも。
しかし、現代からすれば傘/蓑や葺き屋根としての材料イメージしか浮かばないので、その辺りの感覚はよくわからない。
初代天皇の懐かしき初夜の思い出の管畳から想像するに、いつまでも二人の仲が切れずの根着くということで、これが習わしだった可能性もあろうが。

宮廷に大后が戻り、朝廷機能不全はさけられたが、宮には妃・妾を一切同居させないという掟を認めざるを得なくなってしまったことが、歌で語られている。
天皇は、隠れて八田に通う以外に手はなくなったのであり、系譜と敬称から見て、大后は実質的に絶大な権限を握ったと見てよさそうだ。
⑯┬石之日売命(葛城之曽都毘古の娘)…大后
┼┼├─⑰大江之伊邪本和気命
┼┼├─ 墨江之中津王
┼┼├─⑱蝮之水歯別命
┼┼└─⑲男浅津間若子宿祢命
⑯┬八田若郎女(庶妹)
┼┼《無》
⑯┬宇遅能若郎女(庶妹)
┼┼《無》
⑯┬K日賣@吉備
┼┼《無》
⑯┬髪長比売(日向之諸県の君 牛諸の娘)
┼┼├─波多毘能大郎子/大日下王
┼┼└─波多毘能若郎女/長日比売命/若日下部命

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