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■■■ 「古事記」解釈 [2022.12.29] ■■■
[歌鑑賞87]夏草のあひねの浜の
【軽大郎女】軽皇子の愛が移らぬようう
那都久佐能なつくさの 阿比泥能波麻能あひねのはまの 加岐加比爾かきかひに 阿斯布麻須那あしふますな 阿加斯弖杼富禮あかしてとふれ
㊄(5-7)-(5-6)-7

    其衣通王 獻歌
    其歌曰

夏草の  夏草の(萎えている)
あひねの浜の  "相寝"の濱で
蠣貝に  蠣の貝殼に …ここでの蠣は"欠き"をも意味する。
足踏ますな  足をお踏みになりませぬよう
明かして通れ  明るくなってから通って下さいね

離れてしまっても、愛が続くことだけを願う軽大郎女は、忘れられてしまうのではないかと気が気ではなく、皇子を思いやる日々。
表面上は、踏んでお怪我をしないようにとの気遣いそのものだが、今、どのあたりにいらっしゃるのかしらという歌であろう。

辞書によれば、枕詞"夏草の"は、日に照らされ萎えていることを意味し、"思ひ萎えて"にかかるとされるが、他にもいくつか存在している。言葉の流れから言えば、常識的には、夏草は深く茂るから、"夏草の野"が一番自然な語彙であり、その場合は"野島"も入る。

伊予への配流を心配して詠んでいる上、景観は浜であるから、この言葉にはそのような情感を埋め込んだと考えてもよいのではないか。つまり、明石海峡を越えて淡路島西海岸の野島港に寄港する航路にと予想されていたとみることになる。どの地だろうと、アイネという地名は見つからないものの。

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