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■■■ 「古事記」解釈 [2023.1.3] ■■■
[歌鑑賞92]三諸の厳橿が本
【天皇】志都歌婚姻の約束を忘れたままだった
美母呂能みもろの 伊都加斯賀母登いつかしかもと 賀斯賀母登かしかもと 由由斯伎加母 ゆゆしきかも 加志波良袁登賣かしはらをとめ
㊄(4-7)-(5-6)-7

    於是 天皇大驚曰
     「吾既忘先事 然 汝守志待命 徒過盛年 是甚愛悲」
    心裏欲婚 憚其極老 不得成婚 而 賜御歌
    其歌曰

三諸の  御諸山の
厳橿が本  御神木の白檮の木の元
橿が本  その白檮の木の元
由々しきかも  神聖で近づき難き
白檮の木の元乙女  白檮の木の元のお嬢さん

実に他愛ない<引田部赤猪子>話だが、4首も収録されている。美和河で洗濯していた童女に対し、求婚したとされるが、おそらく半ば冷やかし。しかし、名前を尋ね、それを明かされてしまえば正式な婚約成立ということになる。
もともとロリコン体質のようだから、可愛かったので、ついつい、そのうち召すから待っているようにと半ば冗談で言ってしまったに違いない。それを聞いて、本気と考える人もいなかった筈だが。
どうしてその様なことになったかと言えば、婚姻でなく官女として召すなら別だが、先ずは通い婚から始まる時代であり、名前を明かすといっても、親の名前を言う必要があるのに、部民というだけで、欠いていたから。
天皇からすれば、そんなことはすぐに忘却の彼方となろうが、女性は忘れずにそのまま時が過ぎただけ。年がいってから宮を訪れたので仰天。
しかし、文字社会ではないから、天皇の言葉は重い。
こうなると、御諸山の御神木である白檮の木の童女であったとでも見なすしかあるまい。遠い昔の。初代天皇の宮の地名である。そして、恐れ多いことで、触れることさえ憚られる、と。
80才の老婆と、いまさら結婚はできないというだけのこと。

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