↑ トップ頁へ

2000.7.5
 
 


窓際研究は楽しい…

 博士号を持つX君は、企業に来る前は、将来は間違い無く大学教授になる人と言われていた。
 彼は、今、企業で嬉々として「窓際研究者」をしている。研究所在籍だが、研究からは足を洗い、軽事務作業をしているのだ。
 どうしてこんなことになったのか。

 彼は、もともとは、トップが大学から無理矢理引き抜いてきた人材だ。新技術に挑戦するということで、先端で研究している彼に白羽の矢が立ったという。仕度金も用意したという。もっとも、大した額ではなかったそうだが、この企業の人事勤労の仕組みのなかでは例外条件だったという。当時は、どうしても来て頂きたかった人材だった。

 入社後しばらくは、うまくいっていたらしい。
 ところが、研究が進み、次ぎのステップに上る時に異変が起きた。

 次ぎのステップに上るために必要な研究費用が予想より多額だったため、上層部で議論が始まってしまったという。「費用をかけて成功は約束されるのか?」と問い詰める役員まで登場したという。権力闘争ではなかったらしいが、ハイリスクな事業化の独走を止めようという意気込みが感じられたそうだ。質問を受ければ、研究所長としては、正直に答えるしかない。「次ぎのステップに進むには不可欠な費用ですが、この投資で成功に近づく訳ではありません。」 これをきっかけに、議論が白熱したそうだ。
 この後すぐには結論はでなかったという。経営幹部の議論が延々数ヶ月続いたという。結局、費用は認められ無かった。

 当然、この研究プロジェクトは自主解散しかない。

 X君は、「不退転の決意」を表明して飛び出したため、大学には戻れそうにない。といって、特殊な分野の専門家だから、企業内の他の研究に就くことも不可能に近い。工場や営業など不向きなのもはっきりしている。
 研究所長ができることは、軽事務作業をつくってあげることかなかったのだという。しかし、本人は、「駄目そうな研究だったし、他のテーマも考え付かないから、食べさせてもらえるだけで感謝」と、あっけらかんとしている。周囲の方が気をつかっているくらいだ。


 苦笑いの目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com