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2000.9.16
 
 


過剰感の違い…

 稀少天然資源を保有している国や企業が優位に立てるのは当然のことだ。

 このことから、資源を確保している企業が有利であると考えがちだ。特に、資源不足を経験している世代に特有の発想である。

 確かに、昔は、「ヒト、モノ、カネ」を沢山抱えこんでいる企業が決定的に有利だった。資源が潤沢である企業だけが、生産量増大も、商品ライン拡大も簡単にできた。成長するマーケットのなかで、こうしたことができる企業は、ほぼ自動的に競争力が高まり、これがさらに資源の増加に繋がるという好循環ができあがった。資源不足の企業は常に弱者だった。

 しかし、90年代に入り、この状況は変わった。マーケットの成長は鈍化し、資源過剰になったからだ。
 従業員、生産設備、資産が多いことを誇っていた企業が零落しかねない状況になった。

 資本市場には余剰資金が有り余っており、伸張の可能性が高い企業には、いつでも投資要請に応えられる状況だ。膨大な資産を持つが、日々の資金繰りが苦しい大企業がある一方で、資産は小さくともキャッシュが即時調達できるので、大胆な大型投資が可能な小企業もある。まさに地位の逆転だ。

 今や、多くの大企業が、数えあげれば切りがないくらい位、様々な資源の「過剰」に苦しんでいる。
 ・生産現場を見れば、低操業の生産ラインを廃棄して操業率向上を具申しているのだが、経営幹部が反対し、赤字で四苦八苦する工場が目立つ。
 ・販売現場では、多種多用な製品を抱えて、過大なマーケティングコストの重圧と、溜まる製品在庫に苦しんでいる。総論賛成、各論反対で、製品ラインの整理も全く進まない。「製品ラインの幅が広いことで顧客を逃がさない」メリットを謳歌している例外的企業を羨望の眼差しで見つめるだけだ。
 ・開発現場では、優秀な学卒を根こそぎ採用して来たせいで人が溢れる。人が多いから分担作業になるが、手続きが複雑化していて、なにをするにも時間がかかる。仕事量に比して人は多いのだが、ミスが減る兆しもなく、多忙一途だ。
 多くの研究者・エンジニアは、歯車が狂っていると感じている。黙っているのは、発言したところで無駄と考えるからだ。

 心のなかで、「今はひたすら忍耐。じっくり待てば、早晩、この過剰は解決。」と期待する幹部とは、見方が180度違う。

 そうとも知らず、「頑張れ」とハッパをかけにくる幹部を、せせら笑うのが研究開発部隊の実像だ。「君達の双肩に会社の未来がかかっている。」という発言に、思わず噴出しそうになるのをようやく抑えた研究者さえいる。


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