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2002.7.17
 
 


大学から続々とベンチャー創出…

 大学からベンチャー創出、との「嬉しい」報道が増えている。このため、すぐに数百ものベンチャーが生まれると言う人さえいる。なかには、最低千社を目標とすべし、との威勢良い話もある。
 こんな風潮だから、産業研究から縁遠かった大学の研究者もその気になっている。こんな時に、疑問を呈するとバッシングの危険があるから、批判ゼロ。

 本音で語ると、どうなるか・・・

 ベンチャーは法人企業だ。政府の規制で、大学教官は勝手に法人登記できないため、会社設立には発起人が必要となる。先ずは、誰かにどこかで企業を立ち上げてもらう訳だ。つてがある大企業サラリーマン個人に頼める類のものではない。リスクを気にせず引き受ける人がいるだろうか。(頼める人がいるなら、もともと、企業と一緒になって産業研究を進めていただけの話だ。そのような状況からほど遠いから、ベンチャー創出が不可欠、との趣旨だった筈だ。)

 たとえ、会社登記がうまくいったとしても、財務経理、監査を一体誰にたのむつもりなのか。優秀なメンバーをどのようにリクルートするのか。ボランティア活動を望む専門家が、日本に溢れているのだろうか?

 もっとも驚くのは、資金計画だ。大学の研究者は少額の出資で、残りはベンチャー・キャピタルから調達しようと平然と語る。会社を動かすには最低1億円近い金がかかる。そのような額を「どうぞお使い下さい」と申し出てくれる人が大勢いると勘違いしているのではないか。支払う方は身銭である。
 ベンチャー・キャピタリストは、徹底的な審査無しには、投資などしない。人物評価や実態調査には最低でも半年かかる。大学の研究者は、そのような審査に耐えられるのだろうか。

 ところが、不思議なことに、ベンチャーが短時間で沢山立ちあがる予定だという。ということは、ほぼ無審査で、会社の態をなさないようなベンチャーが次々と生まれることを意味する。
 日本社会では、大学の先生とのコネを使えば有効なビジネスはいくらでもある。これを利用して、創出数を誇る活動だけはやめて欲しい。
 産業に貢献できそうな大学の研究者は限られている。この人達が、産学協同で活動してくれるなら、ベンチャー、共同研究、ライセンス、等、どのような形態でもかまわない。不得手なら、ベンチャー創出など避けるべきだ。成果が得られるなら、企業はどのような体制でも喜んで対応する。


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