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2002.12.20
 
 


ノミニケーション部長の話…

 製薬企業の研究所でベンチマーク結果を拝見した。前臨床部門のパフォーマンス比較表である。

 ベスト企業例を見ると、たった26名で業務をこなしている。推定データではなく、その企業が教えてくれるという。
 このデータを知りながら、当該企業では、同じような業務に、外部も含めて3倍相当の人員が投入されている。にもかかわらず、アウトプットの質/量ともに劣るのだ。

 驚くほどの差にもかかわらず、その理由を、責任者が平然と語ってくれた。

 「当社は、高学歴で、特定領域の豊富な知識を持つ専門家集団なので、どうしようもないのです。」つまり、隣の机の人とは、専門が違うのである。従って、隣が多忙でも、手伝いようがない。対応できる仕事の幅が狭いから、どうしようもないというのだ。
 しかも、年齢構成の歪みの是正が必要とのことで、人事政策上、若い人が必ず入るという。しかし、高齢側の転出先が無いため人員が膨れている。
 利益を出しているので、誰も改革に手をつけようとしないのである。

 それでは、ベスト企業はどうして小人数体制を構築できたのか。

 部門責任者が、全員に、投与のような単純業務から、病理や申請まで、できる限り多種の仕事をするように指示したからである。もちろん、それができない「サイエンティスト」には退職してもらったのである。

 この結果、質が下がったかといえば、逆に上がったのである。職人芸ではなく、プロフェッショナルとしての挑戦が始まったからだ。各人が、業務に合わせた課題を見つけ、レベル向上に励んだのである。
 驚くことに、このベスト企業では、すべての業務がGLP基準で遂行されているという。予め決めた規格通りに実験を行い、間違い無いようにデータを記録/管理するとの原則を貫いているのだ。小人数なので、プロジェクト管理体制がしっかりしており、ほぼ計画通りに進むのだろう。

 一方、3倍の人員を擁する企業の方は、義務化されている毒性業務等は当然GLPだが、他は「面倒なので」GLP扱いにしない。さらに、GLP部分もコスト削減のため外注に移行中である。
 スケジュール管理は上手くいっておらず、年中騒動が持ちあがる。人が多いのに、皆、多忙である。

 どうしてここまで違うのだろう。

 ベスト企業の部門責任者は、当該分野では常に先端を走り、学会でもオーソリティと称されている方である。常に勉強し、部下にも厳しい。

 一方の企業の部門長には、そうした気概はない。
 ベスト企業のデータを見て、流石ですね、と囁くのみだ。・・・実は、これは夜の部の会合での話しなのである。この部門長は、部下とのノミニケーション力を誇りにしていると語る。


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