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2003.3.17
 
 


3割引きセール…

 日本企業で、液晶ディスプレー開発に携わるエンジニアに呼ばれ、話をする機会を持った。
 エンジニア達は、特注品でもないのに、製造装置を3割高い値段で買わされている、と憤慨していた。

 シェアが巨大なメーカーは、装置の購入量も多いから、割安になるだろうが、それ程大きく違う訳はなかろう、と反論したら、その見方は甘いと諭された。
 新興メーカーは、歴史を誇る日本の大企業の下請政策をよく勉強しており、得られた教訓を取引に生かしているという。・・・日本の装置メーカーに、一方的に、次世代機器の納入価格を提示し、その価格が実現できないなら取引中止、と言い放つらしい。
 この結果が、極安値の購入に繋がった、という。
 おそらく、装置メーカーは、出血大サービス覚悟で、生き残りの事業構造改革に突き進んだのだろう。

 「これでは勝てる筈がないでしょう」とエンジニアは怒っている。しかし、怒りの矛先は、3割引きセールを行った装置メーカーではなく、自社の経営幹部である。

 この企業では、長期に渡る取引を重視しており、特定の装置メーカー/社内部門と「持ちつ持たれつ」の関係ができあがっている。このため、取引関係をいじることはタブーなのだ。
 当然、価格是正もできかねる。価格の3割引は、装置メーカー/社内部門の没落/事業撤退を意味しかねないからだ。
 流石に、社内部門からの調達はやめたらしいが、社外との取引関係だけは維持し続けるらしい。
 このため、いつまでこのような関係を続けるつもりだ、とエンジニアが怒りをぶつけているのだ。

 研究所の幹部によれば、こうした関係は、液晶装置に限らないという。材料から始まって、すべての購入価格が高いという。他の事業分野でも、全く同じ、と断言する。

 この企業は、20年間体質が変わっていないようだ。
 昔、日本の新興企業が、この大企業からシェアを奪ったことがあった。原材料購入価格2割削減を、事業開始直後に実現し、一気にコスト競争力を高めたのである。

 他より安くならないなら、即時購入中止とのプレッシャーが効いたのである。
 その際の、一番の決め手は、「交際接待費ゼロ」の主張だったという。無駄に費やされる労働時間と、高額なゴルフや宴会への出費を、すべてビジネスに回せば、2割引きは簡単に実現できる、と具体的に数字で示したのである。誰でも納得できる、合理的な主張に対して、正直に応えたサプライヤーが、この新興企業と一緒に飛躍したのは言うまでもない。

 一方、当の大企業は、特定のサプライヤーと、その後も「持ちつ持たれつ」の関係を続けた。
 ・・・ビジネスで成功して周囲に嫌われるより、なごやかなお付き合いを続ける方が楽しいのだ。

 製品開発部隊のエンジニア達が怒るのも無理はない。


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