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2004.6.4
 
 


タクシードライバーによる経営指南…

 先日、タクシードライバーにタクシー会社の経営の話しを20分ほど聞かされた。深夜帰宅途中のタクシー車中での本当の話である。

 タクシー事業の成功の鍵は、経営者が真面目に日々事業運営に励むことにつきるという。自らの力量を考えず、生半可な勉強で施策を進める経営者がいる企業は没落するそうだ。

 そして没落のパターンをいくつか教えてくれた。

 第1は、タクシー外の事業や、周辺の関連事業に手を出すパターンだという。こんなことをしなければ、堅実な経営を続けられたのに、余計なことをして、本体まで傾く例が多いという。

 第2は、つまらぬプライドにこだわる場合だ。環境が変わっているのに、相変わらず過去の栄光で、高級イメージを追及している経営者がいるそうだ。ドライバー氏によれば、これは大手特有の現象らしい。早晩立ち行かなくなるのがわかっていても、プライドは捨てられないという。このままなら、大手でも消える運命らしい。

 第3のパターンは、間違ったドライバー教育に力を入れる経営だ。
 この業界の成功企業を真似て、教育を始める企業が多いが、大半は失敗しているという。朝礼や、注意喚起のミーティングを行うこと自体はよいのだが、おしつけ教育をすると逆効果になるらしい。会社は教育の機会を用意すれば十分なのだという。
 教育といっても、所詮は売上伸張が目的だから、役に立つかどうかは、ドライバー次第なのである。収入向上に役に立つ教育とわかれば率先して出席する筈で、出席を強要しても意味はないという。このことがわからない経営者が多いらしい。
 教育が役に立っている企業は、そもそも集客の仕組みが違うという。仕組みを作れない無能な経営者が真似をしても、上手くいく筈がないそうだ。
 なかでも、グループ活動は最悪の試みだ、と語ってくれた。
 もともと、タクシードライバーは、仕事以外の話しを避けるのが礼儀だという。過去の話はタブーなのだそうで、互いの過去の体験が見えてきかねないグループでの話し合いなどもってのほからしい。下手をすると、教育がきっかけで、ドライバーが他の会社に移ってしまうことがあるという。

 第4のパターンは過度の営業ノルマ指示らしい。
 よくあるらしいが、売上が素晴らしいドライバーを表彰したり、インセンティブを与えて、売上増を狙う経営者が増えているという。一見、自然な動きだが、全体としてプラスになることはまずないという。
 例えば、稼ぎが上がらない昼の時間帯は、のんびり働くドライバーの長期雇用が最善らしい。最適なのは、年金暮らしのドライバーだという。40万円の売上目標で十分らしい。これ以上の増収施策は、ドライバーが辞めたりして、首を締めかねないらしい。
 一方、夜は全く違うという。こちらは、生活がかかっているドライバーの仕事になる。黙っていても、ドライバーは手取りを増やすために必死に売上増を図るから、余計なインセンティプなど無い方がよいそうだ。アップダウンはあっても、無視した方がよいらしい。安定して働いてもらえば、収益があがるのだから、無理しないことが肝要だという。
 昼番と夜番のドライバーが毎日スムースに交代し、ひっきりなしに車が稼ぐ体制を敷くことに注力する企業だけが安定しているという。

 ・・・といった話しを聞かされた。
 結局のところ、この指南役氏は、余計なことをしなければ、タクシー事業は堅実に利益を生み出せる、と見ているのである。

 ポイントをついていると思った。利益の源泉であるドライバーの力を生かす方策をとる企業だけが生き残る、と看破したのである。
 もう少し話しを聞きたかったのだが、丁度そこで、タクシーが目的地に到着した。


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