↑ トップ頁へ |
2004.12.13 |
|
|
大学と企業のスピード感の違い…産学連携の体制構築の大学側責任者の講演を聴いた。連携の仕組み作りのスピードは今まででは考えられないほど早い。新組織も、責任者以外は学外からの登用だという。本気である。 まさに、意気込みがひしひしと伝わってくる感じの講演だった。 しかし、その後、企業の方と話していて、気になってきた。 と言うのは、大学と企業では時間感覚が余りに違うから、本当に大学が変われるか、にわかに信じがたかったからである。 講演者のエピソード紹介によれば、研究開発プロジェクトの遅延原因を分析したところ、遅れた6ヶ月のうち4ヶ月が企業側、2ヶ月が大学側の責任ということがわかったという。 実は、この話が、かえって不安を感じさせたのである。 企業側の遅れの原因は、多くの場合、意思決定に時間がかかることだ。大組織だから、資源の振り分け方は色々と考えられる。そのため、資源配賦変更を招く決定は、簡単には決められない。 当該プロジェクトだけの情報だけでは、意思決定できないので、それなりの時間は必要なのである。 しかし、大学側には、そのような事情があるとは思えない。 従って、4ヶ月対2ヶ月という数字だけでは、企業人を説得させる情報になっていないのである。 企業側の意思決定が大幅に遅れるのは、大学側が、企業の実情を理解して、進捗予測や問題点を早めに伝えておかないから、というのがビジネスマンの普通の考え方である。 大学とつきあっていると、ある日、突然、問題点が告げられて、計画が変わる、という印象が強いのである。これでは、大組織はすぐには対応できない。 もちろん、これは、国内での共同研究開発プロジェクトに限らない。米国の大学との共同研究プロジェクトでは、よく遭遇する話、である。 要するに、リスクを考慮に入れた計画を立てて、状況が変わりそうなら、すぐに協議できる体制が求められているのである。 言うまでもないが、企業内では、このような進め方は当たり前だ。 大学の研究者が本気でこのような姿勢に変わるなら、遅れが4ヶ月になっても、ビジネスマンは心配はしない。もともと遅れるとの予想をもとにした計画で進めるからだ。 これができないなら、2ヶ月の遅れでも、とてもつきあっていけない、と感じるだけのことである。 こうした場合、やっかいなのは、企業と大学の研究者のプライオリティの違いである。 大学の研究者は、論文や、学会報告での成果を第一義に考えていることが多いから、こちらのスケジュール変更があると、共同研究開発プロジェクトの進捗状況が大きな影響を受けてしまう。 企業側に、この姿勢がどう映るかは、自明である。 この文化は、すぐには変わるまい。 そんな状況を考えると、大学側の遅れの内容が気にかかるのである。 まさか、学内手続きだけで2ヶ月も遅れたのではないと思うが、疑念は晴れないのだ。 なにせ、試薬ひとつ購入するのにも、1週間以上かかる研究室が存在するのだ。電話一本で、翌日に試薬を使うのが当たり前の企業研究者にとっては、にわかに信じがたい世界である。 ・・・と語ると、おそらく、仕組みの改革は進めている、という返事が返ってくる。 これが、企業人の不信感を増幅する。 不信の対象は、実は、仕組みではないのである。これに大学人はいまもって気付いていないようだ。 最大の問題は、こうした、とんでもない状態を変えようともしない、個々の研究者の態度である。 研究者が、本気で、迅速対応を考えるようになったから、大学の仕組みが変わった、と見ているビジネスマンは少数派だと思う。 管理者が新しく作った仕組みに黙々と従う研究者が大勢いる組織が、「大学」と映るのである。 そのような組織から、産業に役に立つ成果が生まれるものだろうか。 苦笑いの目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |