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2005.3.24
 
 


現代の大企業病…

 大企業の小さな事業部の製品開発担当のエンジニアの方とお話をする機会があった。

 話が弾んだ。
 たまたまだが、ユーザーからその会社の製品の良さを聞いていたからである。

 これだけ聞くと、好調な業績で雑談が盛り上がったと考えがちだが、全く違う。
 昔から鳴かず飛ばずの事業部と言われている部署の方なのである。

 と言うと、対外関係上、止めるに止められない赤字事業、と思うかもしれない。
 これが、全く違う。

 もちろん対象市場は成長していない。しかし、同じ市場で、結構、儲けている中小企業がある。実は、この企業が儲からないだけなのである。
 もっとも、そのことを、従業員も知っている。
 しかし、理由を誤解しているようだ。

 典型は、このエンジニア氏。
 貧乏暇なしですから、と語る。高コスト体質で、生きていくのは大変ですよ、と笑いながら語る。

 中小企業に比べて給与レベルが高いから、儲からないという訳だ。

 しかし、よく考えて見るとどこか変である。
 この事業は、商品販売不振という訳ではない。逆である。しかも、無理な競争が行われている市場ではない。

 十分な利益を稼いでいる中小企業といっても、事業規模は小さい。規模の経済で負けても儲かる。不思議だ。
 確かに、中小企業の給与レベルは低い。しかし、製品原価を見る限り、これだけで差がつくとは考えにくいのである。

 ところが、この事実をつきつけたところで、エンジニア氏は本気に考える気はなさそうだった。

 これこそが、現代の大企業病だと感じた。

 エンジニア氏の話は面白く、常に快活で、いかにも優秀な印象を受ける。こんな素晴らしい人材がいながら、中小企業の収益さえあげられないのは、どう考えてもおかしい。

 調達力による原価圧縮効果だけでも相当大きい筈だ。歴史があるから、施設や装置もあらかた原価償却が終わっているだろう。成熟産業だから、新生産システムで中小企業が優位に立っているとは考えにくい。
 しかも、優れたエンジニアが揃っている。製品開発力も生産技術力も圧倒的優位と言ってよいだろう。
 にもかかわらず儲からない。

 常識的に判断すれば、事業部の収益を奪い取る仕組みがあると考えるしかあるまい。

 従って、儲けたいのなら、簡単である。先ずは完全に独立させ、収奪元をはっきりさせればよい。
 そして身軽にすれば、すぐに儲けが出るだけのことだ。

 おそらく、財務・経理の不合理な賦課をカットし、非合理な計算方法を変えるだけでも絶大な効果があがると思う。
 そして、同時に、事業部の幹部を更迭すればよい。一生懸命仕事をせよ、との指示だけしか出せない幹部を放置していては、良くなることはなどあり得ない。本当は儲かるのに、手をつけたくない人達に去ってもらうのが一番である。
 要するに、頭を使う幹部を登用すれば道は開ける。

 新幹部に、やる気があれば、IPOを視野に入れたMBOを提案するだろうし、中小企業との合併も視野に入れた動きを始めるかもしれない。
 儲ける方策などいくらでもある。

 ・・・と言う話に進んでしまった。

 ここまで来て、実は、エンジニア氏も理解していることがわかった。

 そして、実態を語ってくれた。
 こんな話ができるのは力がある技術屋だけなのだそうだ。

 事務屋さんは、今の仕組みを変えると失業すると感じているらしい。トップ向けに「変革」運動の旗を率先して振るが、本質的な変革は許すまじ、という運動を展開しているのだと。
 そのため、本質的な発言をすると、事務屋さんに睨まれ、早晩左遷だそうだ。

 ハハハ、私もよく生き残ってきましたよ、とのエンジニア氏の発言をきっかけに、違う話題に移った。


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