↑ トップ頁へ

2005.10.31
 
 


英文字プロジェクト嫌いの話…

 たまたま、ある企業のCIOの方とお話をすることになった。

 ERP、SCM、CRMなどのビジネスアプリケーションは導入済みで、業界他社並といったレベルと見て下さいとのことだ。
 一番の悩みを伺ったら、SCM(Supply Chain Management)が上手くいかない点だという。ERP(Enterprise Resource Planning)のような仕組みは、現実のデータに基づくシステムだから問題がないのだが、SCMは入力される需要予測が好い加減で、理屈では効率的な計画策定・スケジューリングができる筈なのに、さっぱり効果があがらないそうだ。
 協力して運営する気がないようだとお怒りだった。

 さんざ社内の不協和音の話を聞いた後で、研究所の幹部の方々にお会いした。

 こちらでは、研究所で直近に対応しなければならない問題の話になった。
 悩みは、ES(従業員満足度)だという。全社一律の調査結果で、研究所が異様に悪いと指摘されたのである。

 そのための徹底的な部門内議論を予定しているという。
 それはそれで結構なことだが、どう見ても、「面倒な仕事だ」感が漂っている。
 それとなくきいてみた。

 すると、英語流行文字のプロジェクトは碌なものが無いとのお言葉。相当な嫌悪感があるようだ。

 ESに問題でもあるのかと思ったらそうではない。
 プロジェクトの内容自体は結構まともだと評価しているのだ。輸入コンセプトで自分達の企業文化にそぐわないという問題ではないのである。

 それでは、何故、英語流行文字のプロジェクトが不評なのか。

 理由は単純だった。

 ESとは人事部門が権力を握るためのプロジェクトという理解なのである。要するに、他の組織の欠陥を指摘し、マネジメント体制の不備を全社的見地から問題視するのだと。

 間違ってはいけないが、これは人事部門の体質ではない。実は、この企業では、人事部門は権力志向が薄い組織で、結構信用されているのである。それでも、反発は強い。

 なるほど。

 これで、CIOの方がイライラした理由が飲み込めてきた。
 SCMとはIT部門が全社的権力を発揮できるプロジェクトとされているのである。全社が協力して立ち上げたものではなかったのである。

 それでは、CS(顧客満足度)はどうなっているのか聞いたら、思ったとおり営業部門が采配をふるうそうである。
 開発部門や、調達部門はマネジメントの仕組みがなっていないと、営業部門からキツイお叱りを受けているらしい。

 さらに、最近流行の、CSR(企業の社会的責任)のプロジェクトは発足しているかきいたら、「もちろん」との答えが返ってきた。こちらの担当は総務部門である。
 研究所にとっては、CSRもやっかいなプロジェクトで頭が痛いという。研究所の倫理はどうなっているのか、近々“査問”されることになりそうだとのこと。

 この会社では、それぞれの組織が権力をふるう道具として、毎年、新しいプロジェクトが立ち上がる訳だ。
 各組織は完璧に蛸壺化しているのである。

 研究所も何か英文字プロジェクトを立ち上げたいものですな、との捨て台詞を耳にして、会合は終わった。


 苦笑いの目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2005 RandDManagement.com