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2005.11.7
 
 


ニート発生原因を考える…

 ニートは求職活動をしないから、その実態は見えてこない。
 実情を知るのは相当難しい。

 しかし、問題視しているのだから、データが無い訳でもない。

 統計数字としては、労働力調査結果が一番信頼できるものだろう。
 これによると、15〜34才で、非就業、非求職、非通学、非家事の「若年無業者」の割合が、1990〜1997年1.1%、1998〜2001年1.3〜1.4%、2003〜2004年1.9%と、最近、上昇していることがわかる。

 内閣府も「若年無業者に関する調査」を行っており、ニートは2002年に85万と見積もっている。(1)

 ともかく、これは一大事ということで、対策が進んでいるようだが、怒りを呼びそうなので、本質的な問題に触れるのを避けているのではないか。
 はっきり言ってしまった方がよいと思うのだが。

 例えば、ニート面談結果の分析(2)がなされていても、多様なパターンがあるとするだけで、共通した特徴の指摘を避けているようだ。

 それは何か。

 実に単純である。親が子に「就職せよ」と言わないのだ。

 ニートは収入ゼロなのだから、家庭からの支援なしには暮らせない。ところが、この状態にもかかわらず、当人に対して、家庭は就業プレッシャーをかけないようだ。
 これでは、ニートから足を洗う気にならないのは当然ではないか。

 これだけでは、とういうことかわかりにくいかもしれない。
 タイプ(2)毎に、大胆に想像をめぐらして、家族の対応を描いてみよう。

 ・「刹那を生きる」タイプの親の考え方
   家計は厳しいが、たいして費用がかかる訳ではないから、負担というほどではない。
   いくら当人に話したところで、解決策などありえそうになく面倒だ。
   勝手にせいと放置するのが一番。

 ・「つながりを失う」タイプの親の考え方
   もともと親は親、子は子で生活してきた。
   子供と話しあう習慣などない。
   家から追い出す訳にもいくまい。

 ・「立ちすくむ」タイプの親の考え方
   大学を出てそれなりの職業につけないのなら働く意味は薄い。
   つまらぬアルバイトなど時間の無駄との考え方は共有している筈だ。
   この問題は、本人しか解決できない。

 ・「自信を失う」タイプの親の考え方
   勉強して、社会的に認められる仕事をすべきだ。できる限り援助する。
   時間がかかっても、良い仕事を見つけて欲しいと言っている。
   やりたい職業が見つかるまで親の所に居るのは当然のこと。

 ・「機会を待つ」タイプの親の考え方
   ともかく家の近辺にいて欲しい。
   そのうち仕事もみつかるかもしれない。
   仕事がないのだからしかたあるまい。

 この状態で、行政が対応しても、効果は限定的な感じがする。
 親が変わらない限り、子が変わるとは思えないからだ。

 独断と偏見で語れば、「働かないで食べることができるなら、それが一番」と考えているのは、実は、ニートではなく、親の方ではないか。子は、親を見習っている可能性があると思う。

 そう考えるのは、ここのところ、主婦願望が急速に高まっている感じがするからだ。一見、ニート問題とは無縁な感じを受けるかもしれないが、家庭における職業感が変化していることの現れであり、違う方向から見ただけのことである。

 この主婦願望は曲者である。
 主婦業が魅力的という話ではないからだ。

 おそらく、職業感を質問すれば、その答えは、「与えられた仕事をこなすだけなら、できればしたくない。自分の好きな仕事をしたい。」となる。一見、正論に聞こえる。
 しかし、好きな仕事には就けないのである。
 問題はこの後である。

 夢に向かって、どう進むかを考えたりしない。無理であり、努力しても報われないと考えているからだ。
 それなら、仕事などせずにすむ、主婦になりたいのである。

 要するに、家計が収入不足とならない限り、働く気などない。
 これは、ニートの考え方となんら変わらない。

 多分、この感覚は、かなり広がっていると思う。働いている人でも、お金のために仕事をしているだけと考えている可能性がある。主婦願望に、共感を覚える人は多いかもしれない。

 もし、親がこんな感覚を持っていたら、その子供も、同じ観点で就業を考えると思う。

 言われなくとも、子は親が頭で考えていることを見抜いている筈だ。
 どこからか、親の声が聞こえてくるのである。

 「どうせ働いたところで、面白い仕事などどこにもないぜ。まだ食べていけるのだから、無理するなよ。」
 「働かなくても、それで幸福なら、それにこしたことはない。」

 --- 参照 ---
(1) http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/chukan.pdf
(2) 小杉礼子「若年無業者増加の実態と背景−学校から職業生活への移行の隘路としての無業の検討」
  http://www.jil.go.jp/institute/zassi/200412/004-016.pdf


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