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2007.2.8
 
 


インテグラルドグマ…

 日本の産業は、モジュラー型は、一部を除けば余りお得意ではなく、力が発揮し易いのは摺り合わせの「インテグラル型」との説が益々力を持ってきたようだ。

 さっぱり利益があがらないのは、コレを忘れたからと語るリーダーが増えているそうだ。
 ウチは摺り合わせ技術が強いから、これを生かせ、と研究者・エンジニアを鼓舞するのである。

 その結果、摺り合わせ作業の徹底化が進んでいるらしい。
 製品の企画から、作りこみまで、様々な分野の技術者が集まって、喧々諤々の議論をする。細かな摺り合わせをすることで、商品の差別化が高度化できるし、コストも下げるとの目論見である。
 確かに、そうなれば結構な話だが、現実は逆。利益は減少し、シェアも上がらない。

 当然である。
 作業には膨大なマンパワーと時間を消費する。個々の製品毎の摺り合わせをするものだから、部品や設計の「共通化」と逆の動きが発生し、製品原価は下がるどころではない。
 お蔭で、皆忙しいく働いているのに、ほとんど利益がでない。景気が上向きだから、それでもやっていけるが、現場はこのまま行くと大変なことになると感じているようだ。
 にもかかわらず、この方式がベストな筈であり、そのうち好転することになっているのだという。

 現実を見る目を失っているのか、面子なのか、原因はわからないが、誰もこの流れを止められないらしい。

 こんな状況を見ていると、技術者のマネジメント教育はさっぱり役に立っていないとの経営トップのイライラ感が伝わってくる。
 本質を理解せず、表面的な知識だけ身につけるから、ドグマ型の展開になってしまうのである。たまたま当たる場合もあるが、外れても語る人はいないから、当人は必ず当たると思ってしまうようだ。

 そもそも、強い「インテグラル型」産業の実際を見れば、単純な摺り合わせではないことなど一目瞭然である。
 競争力を発揮するために、キー部品については、技術進展を優先させてきた。ここだけは、製品毎の摺り合わせなどせず、どの製品でもできる限りそのまま使えるように図ってきた。
 この考え方は、まさしく「モジュール」である。重要な機能を発揮する部分を一括にして、どの製品にも共通的に使えるようにインターフェースの仕様を明確にするという思想を重視している訳だ。
 摺り合わせは、このキー部品の力を最大限に発揮できるように行なっている作業と見ることさえできる。これは摺り合わせ主導とは言えまい。

 先ずは、機能上インパクトが大きい部分をはっきりさせることが、技術マネジメントの出発点である。そして、その力を十二分に発揮するには、どのような全体構成が望ましいかを考える。その時に摺り合わせを行うにすぎない。技術進展が見込まれるキー部品の開発から、やっかいな摺り合わせを進めれば、コストばかり嵩んで、得るものは少ないのは自明である。

 要するに、鍵を握る部分はどこで、その範囲がどこまで及ぶのか、そしてインターフェースはどのように仕様を決めるとよいのか、が重要なのである。モジュラーだろうが、インテグラルだろうが、どうでもよい。
 このマネジメントスキルが卓越していなければ、競争力が生まれる筈がなかろう。
 優秀な技術者を集めても、いつまでたっても力を発揮できないのは、ここに原因がある。

 もちろん、現場はこのことに気付いている。
 しかし、言い出せば、どうなるか。

 低迷企業の一番の問題はここにある。


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