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2008.5.29 |
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破砕すると純粋化してしまう化学の分野以外の人は、「ラセミ化」という用語を聞いてもピンとこないかも知れない。全く同じ原子構造に見えても、鏡で写した像のように2つの立体構造があり、両者の存在がバランスとれた状態になる反応をさす。分子運動を活発化させれば、変化し易くなるから、偏った状態がなくなる筈である。 一方、動きを固定させるべく、ゆっくり結晶化させれば、どちらか一方だけで固まるか、両者が上手く互いの位置を調整しあって丁度半々になったりする筈だ。 実際にどうなっているかと言えば、結晶化していなくても、片方だけが存在していることが多い。それが自然の掟らしい。 と言うのは、普通に化学合成すると、両者半々になるからだ。従って、片方だけ欲しい時は、特殊な合成方法を採用するか、手間のかかる分別が必要となる。 学生時代、このことに、不思議さを感じた人は少なくなかろう。もっとも、化学に興味がなければ、教室での居眠りを決め込む可能性のほうが高いが。 最近、ふとしたことから、この現象をさらにときあかした論文の話をきかされた。(1) 互いに分解しあう、つまり、片方が生成すると、もう一方は生成しにくい、鏡像の2種が共存している状況での実験結果を示したものだという。 すでにできあがっている結晶を物理的に壊して、再結晶化させると、それまでは共存していたのに、状況が一変するというのだ。 どういう訳か多数派100%になってしまうという。 素人流に判断すれば、おそらく、こういうことか。 大きく成長しきってしまった結晶は壊しても結構残っている。これに対して、壊され小さくなった結晶はいったん溶けてしまい、再結晶を余儀なくされる。このため、ほんの少しでも多かった方の結晶が残るので、一色に染まるということ。 半分近く占めていた勢力でも、完全に消滅するのだ。 「どうだ、恐ろしい話だろう、・・・」 くだらぬ現実政治と違って、学問の世界は含蓄があると言いたげ。 どうも、こんな話をしてくれたのは、世界中で、中国の若者が国旗を一心に振り回す様子をニュースで見かけたかららしい。 あまりに情けない姿なので、呆れかえったようだ。 ただ、これは中国特有ではなく、どの国も五十歩百歩らしい。 本当に、今の学生さんは、そんなものなのだろうか。 --- 参照 --- (1) Wim L. Noorduin, et.al. : “Emergence of a Single Solid Chiral State from a Nearly Racemic Amino Acid Derivative” JACS 130(4) [2008] http://stratingh.eldoc.ub.rug.nl/FILES/root/2008/JAmChemSocNoorduin/2008JAmChemSocNoorduin.pdf (スターラーのイラスト) (C) Motoko Mizuhara Chemical Garden http://chemgarden.hp.infoseek.co.jp/index.html 苦笑いの目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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