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2008.9.11
 
 


日本プロ野球ファンの特殊性・・・

 巷では、野球の話でひとしきり盛り上がったそうである。オリンピックで日本チームが余りに弱かったから。
 といった話を、サッカー好きの若い人から、聞かされたのだが、小生は、とうの昔に野球に興味を失っているので、ふ〜ん、という態度で聞き流していた。

 しかし、その話は結構面白かったので、ご紹介しておこう。

 話のとっかかりは、短期トーナメント戦の面白さ。
 高校野球が盛り上がるのは、ココだという。実力的には相当下のチームが勝つ「番狂わせ」があり、これ見たさに、ずっとテレビを眺め続ける人も少なくないという。この理由を、解説者は「気力」と呼ぶらしい。オリンピックでの日本の敗退はソレに当たるとの主張かと思ったら、違った。

 引き続いて米国、大リーグの、ショウビジネスの一面も兼ね備えた面白さを理解してもらうための前段だったのである。
 大リーグファンなら、オリンピック野球に興味がなくて当然であり、日本の野球ファンは異常だというのだ。所詮は短期トーナメント戦のイベントであり、勝とうが負けようが、大騒ぎする道理がないそうだ。大相撲のトーナメント戦に熱中する人がいる訳がなかろうということらしい。
 まあ、それはそうである。大リーグは長期の勝率勝負。もし、チームの実力差が開いてしまうと、結果は予想通りになりかねず、ちっとも面白くない。そうならないようにしながら、チームで戦うから人気があるのだという。・・・これこそが、本来の野球の面白さだという。
 日本のプロ野球は当てはまらないそうだ。驚くことに、チームに実力差があった方が人気が湧くというのである。

 どうして、そんなことがおきるかといえば、チームが勝つことより、個人選手の活躍を期待するファンが主流だからだそうだ。人気選手に活躍させないと、ファンが怒り出す風土なのだという。
 それが一番よくわかるのが、投手の起用方法。「完投」や「完封」を異常と思えるほど重視するそうだ。チームが長期戦で勝利することより、そちらに関心が集まるらしい。
 監督やコーチにしてみれば、勝てそうな試合なら、主戦級投手温存を図り、早めに投手交代を図りたくなると思うが、そんなことは絶対にないそうだ。日本では、人気選手に思う存分やらせていることを見せるのが監督の一番の仕事で、大リーグとは逆だという。
 そういえば、ボストンレッドソックスの松坂投手にしても、完投が期待されているようには思えない。
 つまり、日本の監督には、当座勝ち星を生むための戦術的な采配権しかなく、戦略を練って長期に戦う権限は無きに等しいということらしい。

 そんな話を聞き、オリンピックの野球での、監督の役割がどうなっていうのか気になったので、ウエブを見たが、よくわからなかった。ただ、一つだけ、示唆に富む発言に出会った。
 野球解説者 川口和久氏が“各チームが「日本を倒す」という目標を持って研究してきている”と指摘していたのである。(1)
 これって、前から、当たり前のことではないか。すると、日本は、ろくに研究せず、戦っていたということか。そして、“指揮官は選手たちに任せて、どっしり構えているもの”だという解説。これではチームになるまい。

 なるほど、日本は特殊な世界かも。
 これでは、サッカーにファンが流れるのも無理はなかろう。こちらは、どう見ても、チームプレー優先だからだ。
 個々の選手に任せるだけの指揮官はすぐに退任させられかねまい。スター選手がチームを引っ張る時代はとうに卒業しているのだ。
 今や、監督の力で勝負がつくようになっており、オールラウンドプレーヤーを揃えたチームがリーグ戦を勝ち抜き易いと言われている。
 従って、優れた監督をどうやって引き抜くかが、最優先事項と化している。チームプレーができない個人技優先選手は居場所がなくなりつつあると言えるかも知れない。

 日本のプロ野球ファンは、こうした流れが受け入れられない人が多いらしい。

 --- 参照 ---
(1) 川口和久(談): “攻める気持ち忘れミス続出 「普段の野球」できなかった選手たち” 日本経済新聞 [2008.2.3]
  http://sports.nikkei.co.jp/beijing/column/baseball.aspx?n=MMOLb6000023082008
(イラスト) (C) Free-Icon http://free-icon.org/index.html



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