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2008.9.25 |
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日本のIT産業の現実・・・ビジネスマンと懇談していると、日本のIT産業を発展させるにはどうしたらよいか、との質問をよく受ける。そのような時は、先ず一言“good qestion”と応じ、こちらから逆に質問する。そうすると、一瞬の沈黙の後、大笑いになることが多い。ところが、驚いたことに、真面目に話が続く時がある。前者の人達は問題をわかっているが、後者は現実認識ができていないから、冗談が通用しないのである。 現実が見えていないのだから、議論したところでどうにもならない。まあ、正確に言えば、認識できないというより、認識したくないのだろうが。 そんな姿勢がよくわかるのが、大企業のIT部門の動きである。正確に言えば、社内部門ではなく、その機能を独立させた組織。 もともと社内部門だったのを切り離したのは、投資額や維持費が大きいこともあり、独立させた方が効率的だからとされている。ITに興味はあっても、本体の事業そのものにはたいして関心がない人が多い部隊だから、別管理にして発展のチャンスを探れという説明もなされていたようである。もちろん、これは建前。力がある部隊が存在していた企業の成功例の話がとびかったので、よく考えもせず、費用が削れるということで、流れにのっただけ。 当然ながら、組織分離に当たっては、社外から仕事をとれという指示が下された。これが本音。 想像がつくと思うが、この組織の一番のスキルは、魑魅魍魎とした社内要求を纏め上げる力。これが違った文化の社外でそのまま通用する訳がないから、本来は仕事の進め方を変えなければならなかった。まさに改革のチャンスだったが、「仕事をとれ」と言われれば、それは無理である。従って、結果は見えたも同然。 外部からの受注量を増やす努力を続ければ続けるほど、組織は疲弊していったのである。 流石に、それが目に見えるようになってきたらしく、これはいかんということで、本体に戻し始めたりしているようだ。もちろん名目は、より戦略的にITを活用しようとなる。事業を知ってもらうために、IT以外の業務も経験させようなどという理屈もあると聞く。 まあ、八百屋さんのITシステムを作る人は、店で野菜を売ったらもっといいものができるという話に近い。 ・・・冒頭で大笑いした層は、八百屋さんの話をすると、ここでまた大笑いする。そうでない方々だと、ここでさらに深刻に考えたりする。 この差はどこからくるのか。 どうも、笑えない層は、ITに関して情報過多なのではないか。 と言うと、勉強しすぎと誤解するかも知れないが、その逆である。まともな勉強をしている人は少ないのではなかろうか。 これでは、どういうことかわからないかもしれないから、八百屋さんの話で大笑いした、この産業で働いているプロフェッショナルから頂戴した言葉をご紹介しておこう。・・・「表立って言えないけど、IT屋さんってのは、ワイドショウを見て社会を勉強するような人達なんだよ。」 そして、さらに教えてもらったのが、日本のメディアの特殊事情。 ・役に立たない記事ほど、読むのに時間がかかる。(長くてイライラするのだとか。 ) ・くだらぬ話ほど関心を集める。知らない訳にもいかないから、無駄な時間を割かざるを得ない。 ・技術の話題が途切れると、アンケート結果に大騒ぎする体質がある。 ・米国発の新コンセプトは早めに大々的に宣伝し、名前が知られたら、それを徹底的に批判する。 ・新造コンセプトについては、登場の理由は曖昧そのもの。ただただ、中身の薄い解説が氾濫する。 ・基本文献を読む人は極めて少ない。読むことも推奨されていないので、誤解も多い。 ・素人受けするような技術仕様の比較だらけ。 ・プログラムを書けない人の、業界面白話が一番人気である。 その方によれば、時間つぶしはかなわないから、できる限り「議論」にはつきあわないようにしているという。しかし、全く知らないと村八分になるので、そんな「議論」を眺めている人に、どんな人達がどんな雰囲気で意見を言っているのか聞くておくとか。 勘違いしてもらってはこまるが、この方はこうした風潮を嫌っている訳ではない。これこそが、日本の強みだから、大切にした方がよいとの仰せ。 皮肉かと思ったら、本気。そして、日本の状況を教えてくれたのである。・・・ 例えば、素人が作ったプログラムは、普通は動かないが、日本では動くそうである。奇跡としか思えないようなものもあるという。 当然ながら、プログラムとは作った通りに動く。つまり、動いてはいるが、とんでもなく質は低いものなのだ。ただ、動いていれば、その中身の質は誰もわからない。 それがわかってくるのは、その後。延々とトラブルが発生するからだ。それを、どうにか直して使い続けるのだという。その力量も素晴らしいという。 自分にはとても手が出せない世界だという。 これだけでは、ちょっとわかりづらいか。わかり易い例を示そう。 誰でも経験するらしいが、似たプログラムがあるからそれを使えと、上層部から指示がでるらしい。それはそうだろう。ただならない工数削減効果が期待できるのだから。ところが、もらったプログラムを動かすと、バグだらけ。どうにもならず、ゼロから作りたくなるらしい。ところがである。これをなんとか解決してしまう人が結構多いのだと。 どうして、そんなことになるかといえば、大半のお客さんがそんなプログラムを望んでいるから。・・・実に単純な理由である。 日本では、そのようなお客さんが8割を占めているらしい。 要するに、見積もりが高いという以外に意見はなく、ITシステムで何をしたいのか曖昧なまま発注するのだとか。当然ながら、こんなプロジェクトを受注すれば、途中で仕様変更要求がボンボンでてくる。しかも、スケジュールの概念が無いから、変更して進捗度が変わったところで、関心ゼロ。予定日に動かせというだけ。たまたまだろうが、何でもよいから動くものを期限までに作る仕事になる訳だ。バグだらけで当然なのだとか。 そんなお客さんに限って、一番のお気に入りは、メディアに登場する新コンセプトだという。自分達の会社が時代の流れに乗っていることを社内にアピールできるからである。中身は無くてもかまわないのだとか。 従って、有能な営業は、昔作った仕様書をそのまま使って、「セキュリティ」関係の用語を挿入し、その関連コストをできる限り膨らませて提案しているらしい。結果として、古いプログラムが肥大化したものが出来上がる。動きそうにないものが、現場の努力で動くらしい。そんな状況だから、システム営業の最重要ITスキルは、ワープロと年賀状ソフトと揶揄する人さえいるとか。実際、IT営業は、紙の山に埋まっているそうだ。電話番が一番早く管理職に昇進できるとの愚痴がかわされる職場という話まであるそうだ。 この状況では、プロは滅多なことでは育たない。 能力が低くても、ともかく力仕事で問題点解決にただただ努力する人が一番重宝がられるからである。従って、努力事項を沢山ならべ、それなりの社内書類を作成し、実際には、そのなかの一番楽な作業だけ進め、後は知らん顔をする人が増えるのも道理。 当然の結果として、管理職の能力が一番低いと言われかねない。当たり前だが、ごちゃごちゃのプログラムをどう動かすかなど、指導できる訳がないからだ。できることと言えば、「ワイドショウ」型情報を学び、そこから得た知識を周囲に吹聴すること。ただ、それは顧客には受けるのである。そのかわり、現場には、「後は頼むぞ」としか言いようがないのである。 もっとも、これはこれで、目的が曖昧なハコもの作りを受注し、後は下請けに丸投げし、薄い利益を得る事業モデルには最適なスキルと言えなくもない。 マクロで見れば、このお蔭で、IT分野は、大量の雇用を実現している訳だ。インドへのアウトソーシングで雇用が失われることもあり得ない。ごちゃごちゃのプログラムを動かすスキルを期待できる訳がないからである。 --- 参照 --- (イラスト) (C) Free-Icon http://free-icon.org/index.html 苦笑いの目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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