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■■■ 面白話とは限らない 2015.10.6 ■■■

生涯共寄養老金

    「十五年十月某日、別知人。
    遇旧知於走湯山。深夜、睡覺成詞。
    因賦七言九韻以贈、
    且欲記所遇之地與相見之時、
    爲他年會話張本也」
  日居易
  游艇港岸秋深日、送君乗車泊湯山。
  糸川海口陽光昼、此處逢君是偶然。
  一別十年方見面、相攜飲酒未帰還。
  坐從日中唯談笑、酔到天仙竟未眠。
  齒髮白墨將六十、海空迢遞過三千。
  生涯共寄養老金、公司倶紀念邊。
  往事渺茫都似夢、舊遊朝氣半遊泉。
  醉喜飛唾秋杯表、歌快握手餐棹前。
  莫問考勤楽閑職、且聽興趣好詠篇。


先日、年金受給団員の方とバッタり。10年以上音沙汰なき状態だったが、元気溌剌そのもの。日々行楽三昧と仰せになる。
小生よりかなり上の世代だが、お気楽生活を堪能されているそうで、健康体そのもの。ヨットが浮かぶ海を見ながら、しこたまの生ビールでしばしの歓談と相成った。ここだけ見れば、かつての日本が目指していた、余裕ある引退後生活が実現している。

もちろん、実態からいえば、ギリギリの生活のお年寄りも少なくないが、飢えが発生している訳ではないから、人類史で見れば素晴らしき哉だ。

もっとも、この先はわからぬ。なにせ、年金の財務状況を直視し、なんとかせねばと語ったりすると異端者にされかねない社会だから。
なにせ、30歳の人だと納めた保険料の2.3倍しか受け取れないというのは実にけしからんと大憤慨している状況なのだから。小生など、これほど沢山受給できるとは、なんと恵まれた社会なんだとの印象だが、この程度の数字では大いにご不満な人ばかり。

もっとも、ご立腹の対象は、70歳は5.2倍と不平等が過ぎるという点。NPVで計算するとどの程度の差か定かではないが、どうでもよい話である。
国家財政は事実上破綻状態としか表現のしようがないほど膨大な借金が積み上がっている。にもかかわらず、大バラマキ派野党v.s.中バラマキ派与党の政治が続いているのだ。
どの道今の仕組みが成り立つ訳がない。本当の破綻にいずれ直面する訳で、いくら先送りしようが35年は無理。そんなフィクションの世界の数字で不平等もなにもなかろう。

要するに、その程度の民度の社会ということ。従って、それに合わせた政治が行われている訳である。
こんな数字が出てくるということは、近々、経済成長もインフレ率も共にゼロ近辺をウロウロする状態から脱出できるから安心せよということを意味するからだ。そして、労働人口激減が待ち構えているというのに、その勤労者が大勢の老人への補助金を支払い続けてくれるというのだから、まさに薔薇色の未来像そのもの。
そうそう、約140兆円に達している年金基金の直近四半期運用成績(推定)は、海外株が4.3兆円損で、国内株は5.1兆円損。PKOを兼ね、大々的にご出陣した割には、意外なほど損が少なかったのはご立派。

ともあれ、構造改革絶対阻止派が信仰するブードゥー経済学のご利益は桁違い。
圧巻は、なんの新機軸もなく、潜在成長力不足なのに、頑張ればGDP600兆円が実現できるとのご託宣。選挙も控えているからそろそろどっさりお賽銭をということか。

かつての無謀な戦争に引きずり込んだ精神構造と瓜二つ。勝てる見込み無し、かつ終結シナリオも考えずに、戦争に突き進んだ姿勢とソックリ。
突然の人為的円安で競争力を喪失した輸出企業に膨大な利益を与えるという麻薬的効果で、幻想を抱かせる手法などまさに悪夢の再現。そして、いよいよ、精神論に踏み込む訳だ。GDP600兆円到達を信じて、国民一丸になれとのこと。その動きに冷たい姿勢を見せる輩は非国民とされるのであろう。
しかも、政権批判勢力も又、同じ轍を踏むのだからやりきれない。国際情勢をことごとく無視する独善者の巣窟なのだ。それに加えて、生産性低下こそが人の道と主張するトンデモ集団だらけとくる。

だが、別に悲観する必要はない。自殺者はとんでもなく多いとはいえ、世界に冠たる長寿を実現しているのだから。楽天主義で生きていくのが一番。

(元詩)
 「十年三月三十日、別微之於上。
 十四年三月十一日夜、遇微之於峽中。
 停舟夷陵三宿而別。
 言不盡者、以詩終之。
 因賦七言十七韻以贈、
 且欲記所遇之地與相見之時、
 爲他年會話張本也」  白居易@48歳
水店頭春盡日、送君上馬謫通川。
夷陵峽口明月夜、此處逢君是偶然。
一別五年方見面、相攜三宿未迴船。
坐從日暮唯長歎、語到天明竟未眠。
齒髮蹉將五十、關河迢遞過三千。
生涯共寄滄江上、郷國倶白日邊。
往事渺茫都似夢、舊遊零落半歸泉。
醉悲灑涙春杯裏、吟苦支頤曉燭前。
莫問龍鍾惡官職、且聽清脆好文篇。
  [微之別來有新詩數百篇、麗絶可愛]
別來只是成詩癖、老去何曾更酒顛。
各限王程須去住、重開離宴貴留連。
黄牛渡北移征棹、白狗崖東卷別筵。
  [黄牛、白狗、皆峽中地名,即與微之遇別之所也]
神女臺雲閑繚繞、使君灘水急潺湲。
風淒暝色愁楊柳、月弔宵聲哭杜鵑。
萬丈赤幢潭底日、一條白練峽中天。
君還秦地辭炎徼、我向忠州入瘴煙。
未死會應相見在、又知何地復何年。
川合康三訳注:「白楽天詩選 下」岩波文庫 2011年
(報告書)
平成26年財政検証結果レポート「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」
(日経記事)
GPIFマイナス運用か 7〜9月、世界株安響く 2015/10/1付日本経済新聞 朝刊

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