表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.5.6 ■■■ 柿の七絶柿は日本原産との記載をみかけることが少なくない。そう考えたい人が多いのだろうか。万葉集に全く登場しないし、礼記 内則を見ると棗、栗、榛、柿の4種が定番品になっており、常識的な見方をした方がよいと思うが。馬王堆[#3]から種が出土しているのだから、大陸では、すでにその頃から栽培品種が存在していた可能性が高いのである。 → 「日本的果実の木」 品種もそれなりに揃っていたようである。「卷七 酒食」で、櫻桃を鴻柿のように皮に皺をつくらせて味を格段に向上させる秘法があると紹介されており、鴻柿という名前が一般的に通用していたようだから。 「酉陽雑俎」も、柿に関しては有名な書で、以下の文章が柿の説明として引用されることが多い。これぞ秀逸、ということか。・・・ 柿,俗謂柿樹有七絶, 一 壽,・・・寿あり。 二 多陰,・・・夏季、葉が茂り日蔭をつくる。 三 無鳥巣,・・・鳥の巣なし。 四 無蟲,・・・虫つかず。 五 霜葉可翫,・・・秋季、霜にやられず。 六 嘉實,・・・実は嘉なり。 七 落葉肥大。・・・落葉腐葉土は良き肥料。 [卷十八 廣動植之三 木篇] 尚、1〜4を3文字記載の、樹多壽、葉多蔭、無鳥巣、無蟲蠹、にして、残りは4文字の、霜葉可翫、佳實可啖、落葉肥大とする場合も。後世の補作なのか、版の違いか調べてはいないが。 小生は、壽嘉といった曖昧な表現より、樹入藥とか金衣玉液の方がにつかわしいと思うが、どうも縁起がよい理由は植物自体のそのような効用ではなく、名称にあるようだ。 「柿柿如意」(何事もすべて上手く行く)ということらしい。当然ながら、掛け軸や飾りに使われることになる。中華文化独特の音の縁起である。 事・・・同音同声 獅・・・同音異声 そう言えば、武者小路実篤の"日日是好日"も柿絵だが、そういうことなのだろうか、と考えていると、成式の7絶は俗説に手を入れていそう。「実」を賞味することより、植物全体を見ているからだ。 説明不要だと思うが、実篤の柿賦は、「枝ぶり見よや 甘しとは我はおもわず」といった風情で貫かれている。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎 5」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |