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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.8.3 ■■■

蛇的王国

蛇足のお話[→]のついでに、蛇話。・・・

南安蠻江蛇,至五六月,有巨蛇泛江岸,首如張帽,萬萬蛇隨之入越王城。 [續集卷八 支動]

ここでの"蠻江"は、福建仙霞嶺山脈を源流として、福州で海に注ぐ、この地域の最大河川"江"を指す。

王城の話が出ているので、そこらも確認しておこう。

楚によって滅ぼされた越の残存部族は南方に移動し、土着の百越の部族と共同で、漢の高祖のもと、B.C.202年に越を樹立。無諸が始祖。その後、135年に武帝に滅ぼされた。(強制移住させられたが、「操船行水」から離れる江淮地区を嫌った一部が、倭国に逃亡との説がある。)
その王城の遺跡が福建武夷山南麓の城村で。大規模な貴族墳墓がその西南の蛇子山で。それぞれ発掘された。
この辺りは毒蛇が多く、ほとんどの部族は文身断髪で蛇がトーテムだったと想定されている。「説文解字」のの解釈は、「東南越蛇種」である。

上記の文章は、ここらを描いたものとも言えそう。
ということで、生物としての蛇についても書いておこう。

ここらの地域は、五六月は降雨量最大で気温も上がる。そのため、蛇が水辺に集中する。大いにご注意のほど、と言われる季節。
特に、昼夜を問わず活動し、遊泳する上、毒性猛烈とくる武夷山五歩蛇[尖吻蝮:台湾の百歩蛇]は危険そのもの。
もっとも、深谷の地域だから、山に入れば様々な蛇が棲息していると言われている。眼鏡王蛇/King cobra、船山眼鏡蛇/Chinese cobra、白唇竹叶青/White-lipped pit viper、金環蛇、銀環蛇/Many-banded krait/雨傘蛇(潮州話,和名)といった恐ろしい種は勿論のこと、58種の棲息が確認されており、まごうかたなき"蛇的王国"なのである。[「点撃進入蛇的王国−武夷山生物多様性信息平台」福建省武夷山生物研究所]

そう言えば、2016年4月4日、福建南安の金淘鎮蓋溪村で家屋傍らの水溝で3.5mの巨蟒発見とか。["南安發現超級大蟒蛇 有成年男子大腿粗"@泉州晩報]
ヒトが住む一帯でも、まだ食べ尽くされてはいなかったようである。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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