表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.8.31 ■■■ 平壌に刀豆中国で出版された、日本の食文化紹介本を眺めたことがある。 → 「日本味儿」を覗く [2015.3.16]漬物の話が書いてあるのだが、そこにはこんな記載が。・・・ 七種“野菜”調和的妙物福神漬 調和の妙が本当にあるのかはなんとも言い難いが、ともあれ7種[瓜,蓮根,紫蘇,蕪,茄子,大根,刀豆]も入れるのである。その理由は定かでない。余りモノを使うだけなら、他の野菜でもよさそうに思うが、多少の変化はあるものの、基本形は保たれる。規則があるとはいえ、どうしてそこまで拘る必要があるのか不思議である。 しかしながら、由来ははっきりしている。上野 池之端にあった茶店[酒悦初代清兵衛]が、ご近所の混ぜ合わせ漬物を洗練させたと伝わっている。もちろん、江戸名産品になる。 しかし、ベッタラ漬けとは違い、今でも有力な地位を保っているのは、カレーのチャツネ代用品として定着しているからだろう。 こちらの食習慣が始まった切欠は、日本郵船欧州航路での利用とされる。 要するに、誰でもが知る多種類の刻み野菜漬物。ただ、そのなかに一種類だけ、馴染みの薄い野菜が入っている。 刀豆/鉈豆[なたまめ]/Sword beanである。 江戸期には、結構、栽培されていたことになる。渡来したばかりで珍しさもあって、人気が出たのと違うか。 もともと熱帯系の植物だから、(日本では鹿児島での栽培が盛んなようだ。)江戸には向かないと思うが、無理矢理作っていたのではあるまいか。中国でいえば、おそらく、長江以北では栽培されていまい。 ・・・、と思っていたのだが、どうも、そうではないようだ。 驚いたことに、朝鮮半島でも栽培されていそうなこと。マ、朝鮮半島は、南端の一部は亜熱帯モンスーン的だから、そこならわかるが、北部なのである。寒冷地なので気候的に難しそうに思うが、そのような見方は間違いということになる。 成式はその辺りに気付いていたようで、夏農耕好適地の平壌辺りに刀豆があると書いている。冬は超寒冷だが、朝鮮半島ではこの辺りだけは穀類や豆類の農業が栄える筈と見たのだと思われる。 挾劍豆,樂浪東有融澤,之中生豆莢,形似人挾劍,斜而生。 [卷十九 廣動植類之四 草篇] 挟剣豆という豆あり。 楽浪の東の融澤[平壌付近]に生えている。 もちろん、豆には莢がある。 その形は、人の持つ扁平タイプの劍に似ており、横に斜にした劍を挟めているようにして生えている。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2016 RandDManagement.com |