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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.18 ■■■

立葵の炉灰

唐代、蜀葵/立葵/"common" Hollyhockは、牡丹より人気があったようである。

牡丹,---
元和
[806-820年]初猶少,今與戎葵[=タチアオイ]角多少矣。
   「牡丹史」

この戎葵については、なにも触れるつもりがなさそうに見える。花の鑑賞なら、牡丹で勝負ありということで。

ところが、この名称では気分がのらないのか、名前を変えて、その価値を指摘しているのだ。・・・

蜀葵,
(本胡中葵也,一名胡葵。似葵。)
(大者紅,) 可以緝為布。
枯時燒作灰,藏火,火久不滅。
花有重臺者。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇] ( ) 内は原本によっては欠落.
蜀葵を、牡丹の対比で戎葵と呼んだが、呉葵とも言われている。本来は胡葵なのだが。
通説は四川辺りが原産とされているが、ソグドから渡来したものであり、それは間違い。
古くから蔬菜として使っている葵と似ているが、蜀葵はもっぱら鑑賞用。
大きいタイプは紅色。牡丹登場まで人気を集めた。
なんと、布に編むこともできる。
枯れてしまったら焼いてその灰を採る。
その灰に火を入れておくと火持ちするから貴重だ。
尚、八重咲もある。鑑賞用品種開発が盛んだったのである。


灰の話だけはわかりにくいので、ご説明しておこう。

ずっと後世の話で恐縮だが、枯れた蜀葵の灰は有名なのである。もちろん、香道でのこと。・・・
頭青朱紅K煤土黄各等分雜於紙中装炉名錦灰
紙灰炒通紅羅過或稻梁焼灰皆可用
乾松花焼灰装香炉最潔
茄灰亦可藏火火久不息
蜀葵枯時焼灰妙
  [明 周嘉胄 撰:「香乘」卷二十 1641年]

もともと、香をたくのに力を入れていたのは、仏寺であるから、成式もこの辺りは詳しかったであろう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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