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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.26 ■■■

芋考

はたして芋を指しているか、考えさせる記載を取り上げておきたい。
先ずは、すでに検討した一項目。・・・

,生終南山中。葉如荷而厚。
  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

この植物を里芋と見なしたが、それは自明という訳ではない。
"[異体字は茜]"という漢字は"艸+千"であり、草木茂盛しか意味していないからだ。生えている場所と、葉の状況から見て他は考えにくいというにすぎない。
   「昆明池と終南山」【天

里芋には、極めて沢山の種類があるから、次もその一種と考えがちだが、それでよいかもなんとも。・・・

雀芋,状如雀頭,
置幹地反濕,置濕處復幹。
飛鳥觸之墮,走獸遇之僵。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

但し、こちらの漢字は正真正銘のイモ。

普通、雀[=小+隹](スゝメ=些々群)と命名する時は、烏瓜 v.s. 雀瓜のように、烏芋 v.s. 雀芋との発想から。大 v.s. 姫の感覚に近い訳だ。
芋の場合、烏芋は中国的な黒クワイを指すが、雀芋と呼ばれる芋は知られていない。
しかしながら、雀頭のような形をしている里芋は存在している。親芋-子芋の関係がなく、株立ち傾向があると、その形になりがち。

形態が雀頭との命名は、雀蜂と似たような用法だが、地中の芋に鳥の名称を当てるのはなんとなくしっくりしないが、そういうものでもなさそう。・・・
芋,一名土芝,一名蹲鴟,
史記注云:
 芋頭形類鴟鳥之蹲。
一名
説文云:
 齊謂芋為
  [「類書集成」第一十六卷 蔬譜 芋]

大きい芋の場合は、蹲[=つくばう][=鳶/トビ]と名付けられたリしていたようだから。(ご注意:うずくまったフクロウと記載している書もある。)
ただ、土芝というところから、茸類と同じように見る発想もあったということか。茸毒に当たる可能性ありということかも知れぬが。

乾燥させると湿気を帯び、水分が多い場所だと逆になるという記述には、違和感を覚えるが、里芋だから水分多い場所が得意という訳ではなく、すぐに根腐れをおこす種類もある。芋が乾いたら水をやる必要があったりする。ご存知、鑑賞用の海芋/不食芋[クワズイモ] or アロカシア/Giant upright elephant earはその手の種。

クワズイモは加熱による毒抜きで食用になる訳だが、野生のほとんどの里芋類には毒があるのは当たり前。そんなことで、鳥や獣もそれに当たるという話が残っているのだろう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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