表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.3 ■■■ 爆竿「正月の行事」[→]について書いたが、そこで、爆竹をとりあげた。病気をもたらす山魈が都に来ないようにと、様々なことをするなかに、硝石を詰めた竹筒で爆裂音を出していた筈で、長安もさぞかしうるさかったに違いないが、成式はこれに関する話は取り上げていない。 しかし、山魈についての記載があり、どういうことかわかっていた筈である。 以下が、「酉陽雜俎」における山魈にあたる記載。別名だらけ。・・・ 山蕭, 一名山臊, 《神異經》 作猩參(㺑), 《永嘉郡記》 作山魅,一名山駱,一名蛟,一名濯肉,一名熱肉,一名暉,一名飛龍。 如鳩,青色,亦曰治烏。巣大如五鬥器,飾以土堊,赤白相見,状如射侯。犯者能役虎害人,燒人廬舍,俗言山魈。 [前集卷十五 諾皋記下] 実は、古代の道教的文献に"山精"が記載されているのだが、無縁な話のようにも思える。・・・ 抱朴子曰: 山中山精之形,如小兒而獨足,走向後,喜來犯人。人入山,若夜聞人音聲大語,其名曰蚑,知而呼之,即不敢犯人也。一名熱内,亦可兼呼之。 又有山精,如鼓赤色,亦一足,其名曰暉。又或如人,長九尺,衣裘戴笠,名曰金累。或如龍而五色赤角,名曰飛飛,見之皆以名呼之,即不敢為害也。 [「抱朴子」内篇 登渉] おそらく、様々なイメージがあり、その違いを無視して強引に1つのコンセプトにまとめる動きがあったのだろう。 現代、一番よく見かける名称は山魅だが。 すぐ気付くのは、「神異經」の引用が随分と手抜きで、山臊そのものについては何も書いていない点。 猩參と呼んでいるというだけ。おそらく、類人猿的な命名という指摘。 そこで、原文では、どのような話が描かれているのか眺めてみた。・・・ 西方深山中有人焉,身長尺餘,袒身,捕蝦蟹。性不畏人,見人止宿,暮依其火以炙蝦蟹。伺人不在,而盜人鹽以食蝦蟹。名曰山臊。 其音自叫。人嘗以竹著火中,爆烞而出,臊皆驚憚。 犯之令人寒熱。此雖人形而変化,然亦鬼魅之類,今所在山中皆有之。 [東方朔:「神異經」西南荒經三則] 成程。 山臊は、ヒトを畏れずというより、懇意にしたがる訳だ。山にやって来たヒトから塩を盗む必要があるから。 マ、鹿から始まって、獣は塩が大好き。特段変わっている性状ではない。 しかし、爆発音にはビックリ仰天する体質らしい。特に、焚火に竹を入れたりすると。 と言うことで、ここから正月の爆竹に繋がったということ。"辟山臊惡鬼"には先ずはコレとなっている訳だ。 正月一日,是三元之日也,謂之端月。--- 鷄鳴而起。--- 先於庭前爆竹,以辟山臊惡鬼。 按: 《神異經》云: 西方山中有人焉,其長尺餘,一足,性不畏人, 犯之則令人寒熱,名曰山臊。 人以竹著火中,烞熚有聲,而山臊驚憚遠去。 《玄黄經》 所謂山㺐鬼也。 俗人以為爆竹燃草起於庭燎,家國不應濫於王者。 [梁 宗懍 撰, 隋 杜公瞻 注:「荊楚歲時記」] (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |